高インフレ、通貨安、低い賃金と税収…危機の要因は“複合的”
パキスタンの経済は、複数の深刻な問題に苛まれています。
アジアの主要12経済圏の中で、そのインフレ率は突出して高く、通貨パキスタン・ルピーの価値は3分の1にまで下落しました。
これにより、医療機器から自動車部品まで、輸入に依存するあらゆる製品の価格が高騰。
中間層が普通の車を買うことすら夢物語となり、医療費も手の届かないものになりつつあります。
そもそも、パキスタンは高給を得られる国ではありません。
驚くべきことに、この国で所得上位20%の層に入るために必要な月収は、わずか6万4000パキスタン・ルピー(約3万3000円)です。
交通費を節約するために、自家用車からバイク通勤に切り替える銀行員もいるほどです。
さらに構造的な問題として、税収の低さが挙げられます。
これは国際通貨基金(IMF)も長年指摘してきた課題です。
政府はIMFからの融資条件を満たすため、電気・ガス料金を引き上げ、さらに税金を過去最高の40%も引き上げるという厳しい決断を下しました。
しかし、この措置は国中で激しい怒りを引き起こし、専門職、産業界、農家など、あらゆる層から不満が噴出しています。
2022年のイムラン・カーン元首相の失脚をめぐる政治的な不安定さも、こうした国民の不満に追い打ちをかけています。
一方で、高い法人税率は企業の国内投資意欲を削ぎ、魅力的な雇用を生み出すことを阻害するという悪循環も生んでいます。
小売業や農業といった、課税が不十分とされる分野での徴税強化が急務となっています。
