祖国への愛 そして戻れない現実

現在パキスタン政府は、IMFから70億ドルの融資を受けるため、痛みを伴う構造改革を進めています。

政府は、この改革が「数十年にわたるIMFへの依存を終わらせるために必要だ」と国民に理解を求めています。

しかし、長期的な解決策のためには、国内企業が自ら従業員を引き止め、頭脳流出を食い止める努力が不可欠です。

一部の先進的なIT企業では、給与の一部を価値の安定したドルで支払ったり、海外展開を加速させて国際的なキャリアパスを提供したりすることで、優秀な人材の確保に努めています。

ある経営者は、「海外事業を拡大することで、従業員が私たちと共に長期的なキャリアを築く意欲と動機を持てるようにしたい」と語ります。

問題は、こうした企業の努力が、人材の引き止め、さらにはアサド氏のような国外の人材を呼び戻すのに十分かどうかです。

当のアサド氏は、将来の帰国について「その選択肢は常に残っています。私の国であり、愛していますから。問題はありますが、常に貢献したいと思っています」と語ります。

しかし、アサド氏の表情は晴れません。

「しかし、近い将来、状況がそれほど改善するとは思えません。アメリカに来て1年経ちますが、状況は良くなっていません。そして、この現状はまだ続くでしょう」。

祖国への愛と、戻れない厳しい現実。

その狭間で揺れる人々の苦悩は、パキスタンが抱える危機の深刻さを何よりも雄弁に物語っています。

国の未来を担うべき人々が、自国に未来を見出せない。

この負の連鎖を断ち切るための道筋は、まだ見えていません。