米大統領警護隊(シークレットサービス)の狙撃対策部隊が4年間にわたり、必要人員をほぼ4分の3下回る状態で運用されていたことが、国土安全保障省(DHS)監察官室の調査で明らかになった。調査は2024年に起きたトランプ氏暗殺未遂事件を受けて実施されていた。

トランプ氏は24年7月、大統領選での返り咲きに向けて開いたペンシルベニア州バトラーでの集会に臨んだ際に銃撃され、右耳の上部を銃弾が貫通する傷を負った。集会参加者1人が銃撃により死亡し、この他に参加者2人が重体となった。屋上から発砲した男はシークレットサービスの狙撃手によって射殺されている。

この事件を受け監査官室は調査を実施。当日の狙撃手の行動については別の調査対象となっているとして検証しなかった一方、狙撃対策部隊の組織的な人員不足や訓練の不備を指摘し、政治的暴力が高まる中で要人が脆弱(ぜいじゃく)な状態に置かれていたと警告した。

調査によると、20-24年の狙撃対策部隊は「任務遂行に必要な水準を73%下回る人員で編成されていた」という。その穴を埋めるため、同部隊では約24万8000時間分の残業(年間で職員24人分に相当)が発生し、国土安全保障省の他部門が狙撃手を派遣していた。ある職員は24年だけで1403時間の残業をこなしたという。

また、一部の狙撃手は義務付けられている射撃資格更新試験に不合格となりながらも現場に配備されていたことも判明した。記録によると、24年4-6月(第2四半期)には部隊の狙撃手全員が日中用ライフルでの更新試験を受けていなかった。それにもかかわらずバイデン大統領(当時)を含む要人の警護任務47件に従事していた。

報告書は「適切な人員配置と訓練を確保できなければ、わが国の最高指導者が負傷または暗殺される恐れがあり、米国全体の安全への信頼を揺るがしかねない」と警告した。

人員不足の一因は、志願者が応募する前に制服部門で少なくとも2年間勤務することを義務付けたシークレットサービスの規則にあるとされた。この要件によって、需要が2倍余りに膨らむ中でも採用が遅れていたという。当局は昨年、この勤務期間を1年6カ月に短縮し、特定の勤務地での募集や定着を促すためのボーナスを導入した。正規の人員水準には26年までに到達できる見込み。

監察官室はまた、シークレットサービスに対し、軍や警察の人材も対象にした募集、正式な人員計画の策定、資格を有する狙撃手のみを配備する仕組みを整えるよう求めた。

原題:Inspector General Says Secret Service Sniper Team Understaffed(抜粋)

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