(ブルームバーグ):石破茂首相は23日午後、韓国の李在明大統領と首脳会談を行った。北朝鮮を含む東アジアの安全保障環境を巡る不透明感が高まる中、協力関係の強化を確認した。

石破首相は首脳会談後の共同記者発表で、日韓を取り巻く戦略環境は厳しさを増しており、日韓関係と日米韓連携の重要性は高まっていると指摘した。大統領とは1965年の国交正常化以来、築いてきた基盤に基づき、「日韓関係を安定的に大きく発展させていくことで一致した」と述べた。
これに対し、李大統領は首脳会談で、貿易から安全保障まで国際秩序が揺らいでいる現在、「共通の価値観と立場を共有する韓国と日本が協力関係を強化することはこれまで以上に重要だ」と語った。
李大統領の来日は就任後初めて。以前は日本に敵対的な言動で知られていたが、米国に先立ち訪れることで日韓関係重視の姿勢を内外に示した。参院選大敗で苦境に立つ石破首相にとっては大統領との信頼関係構築で外交手腕を発揮すれば、自民党内からの退陣圧力をけん制することができる。
李大統領は15日、日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」の演説で、日本を「不可欠なパートナー」と位置づけていた。
23日付の朝日新聞によると、大統領は未来志向の日韓関係に向けて新たな「共同宣言」を出すことに意欲を示したと同紙などに書面で回答。慰安婦や元徴用工を巡る問題に関する過去の政権での合意や解決策について「簡単に覆すことはできない」と述べたという。
シャトル外交

今回の大統領来日は、新政権下で首脳が互いの国を頻繁に訪問する「シャトル外交」の第1弾となる。両首脳はさまざまな分野での協力についても協議した。
石破首相によると、首脳会談では安全保障、経済安全保障分野での戦略的な意思疎通強化や水素、人工知能(AI)などに関する協力の推進を確認。地方創生、人口減少など共通の課題で政府間協議の枠組みを立ち上げることでも一致したという。
北朝鮮への対応に関しては、完全な非核化に向け、日韓、日米韓で緊密に連携していくことも改めて確認した。
国民交流では、若者が働きながら外国に長期滞在できる「ワーキングホリデー」制度の拡充で合意したことも明らかにした。
日韓両政府は同制度の査証(ビザ)については、相互に2回までの取得を可能とする方向で最終調整に入ったと朝日新聞が報道していた。これまでは1回のみだった。この新ルールは早ければ10月にも導入される可能性がある。
日米韓
日韓関係は尹錫悦前大統領と岸田文雄前首相の時代に「シャトル外交」再開にこぎつけるなど大幅に改善した。長年の歴史的対立を脇に置き、米国との3国間協力を強化し、当時のバイデン大統領と3カ国首脳会談も開いた。
3人が全員交代したことで、日米韓協力の枠組みが指導者交代に耐えることができるかどうかに改めて注目が集まっている。 李大統領は24日まで日本に滞在した後、米国を訪問。25日にトランプ大統領との首脳会談を行う予定だ。
(日韓首脳会談後の共同記者発表を受け、更新しました)
--取材協力:守護清恵.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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