(ブルームバーグ):大型案件のJX金属が3月に上場して以降、目立った動きのない国内の新規株式公開(IPO)市場で投資家のリスク志向に回復の兆しが見えてきた。
小型人工衛星の開発・運用を手がけるアクセルスペースホールディングスは4日、公開価格を仮条件の上限で決定した。投資家との面談を経て公表した仮条件は345-375円で、ブラックロックのファンドが購入する意向を示していた。想定時価総額は240億円、13日に東京証券取引所グロース市場へ上場する。

IPO規模は約77億円と小粒だが、赤字企業の上場というハイリスク案件で堅調な投資家の需要が確認されたことは後に続く企業の支援材料になる可能性がある。米国の関税による実体経済や市場への影響が不透明な中、投資家心理が回復し始めたことを映す。
IPO銘柄などに投資する運用会社fundnoteの川合直也最高投資責任者(CIO)は、アクセルスペースは利益を生み出すまで時間がかかるディープテック企業でありながら、「上限で決まったことは安心感をもたらす」と指摘。日経平均株価も4万円台を回復し、投資家がIPOに参加するモメンタム(勢い)が改善したと言う。
投資家が国内IPO市場への参加に二の足を踏む理由はある。上場後の株価パフォーマンスが他のアジア市場を下回っているからだ。ブルームバーグのデータによると、2025年に日本で上場した銘柄で加重平均したパフォーマンスは約14%高と、香港の46%高と比べ大きく見劣りする。

08年設立のアクセルスペースは光学衛星を手がける。防衛省は同衛星などの使用に予算を確保しており、追い風となりそうだ。さらに政府は昨年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に宇宙戦略基金を設置し、今後10年間で宇宙産業に1兆円を投資することを決めた。国を挙げて宇宙ビジネスの拡大にかじを切っている。
ただ、同社の上場をきっかけに国内IPO市場が年末に向け盛り上がるどうかはなお不透明な部分も残る。fundnoteの川合氏は、雇用統計の鈍化で米景気に対する懸念は高まっており、米景気の減速が国内IPO市場の重しとなる可能性があると述べた。
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