薬用酒メーカーの養命酒製造が非公開化を検討していることが6日、分かった。すでに1次入札を実施し、複数の投資ファンドから受けた提案内容を精査している。複数の関係者が明らかにした。

同関係者らによると、養命酒は非上場化などの資本戦略検討のため、財務アドバイザー(FA)に三菱UFJモルガン・スタンレー証券を選定した。同証は事業会社やファンドに声をかけ、このほど1次入札を実施した。経営陣が参加する買収(MBO)の形式を取る提案も含む可能性がある。

養命酒は同日、非公開化を含めた企業価値向上を目的とするさまざまな選択肢を検討している、とのコメントを発表した。三菱モルガンの広報担当者はコメントを控えた。

報道を受け、養命酒株は一時前日比5.3%高まで上昇したあと、買い気配となり、気配値はストップ高水準となる同21%高の3975円まで上昇している。

日本では企業の資本効率の改善やガバナンス(統治)改革を促す形で、投資ファンドが関わる非公開化が相次いでいる。2024年に東京証券取引所で上場廃止した企業は94社と過去最高だった。物言う株主(アクティビスト)による提案も活発で、今後もこの流れは続きそうだ。

養命酒の足元の業績はさえない。25年3月期の営業利益は、主力商品「薬用養命酒」の売り上げ減や先行投資が重なり前の期に比べて7割減った。

資本政策も難航している。株価純資産倍率(PBR)は東証が目安とする1倍前後で推移している。自己資本利益率(ROE)は1.46%で同業の平均(6.74%)を下回る。

それでも株価は今春から上昇傾向にある。5日の終値は3275円で3月初頭から2割高い。時価総額は545億円だ。

同社を巡っては、大株主の大正製薬ホールディングスが3月、保有する全株式(議決権ベースで約24%)を投資業などを営む湯沢(東京都渋谷区)に売却した。新たに筆頭株主となった湯沢は、旧村上ファンド系関係者の野村幸弘氏が資金提供をしている。

市場では今後の経営改革や資本効率化圧力を見込んだ買いが入っているとみられる。関係者の1人によると、経営の実力と株価の動向が乖離しており買収側が最終的にどれだけの金額を出せるかは不透明だという。

養命酒は1923年、長野県で創業した。55年に東証に上場し、現在は本社を東京都渋谷区に置く。薬用養命酒は国内での認知度が高く、ジンやのどあめなども販売する。

現金や不動産などの資産は豊富だ。東京都渋谷区南平台の一等地に本社も入る11階建てのオフィスビルを保有している。長野県には自己所有の大型工場や関連店舗を持つ。

(養命酒のコメント発表を受けて記事を更新します)

--取材協力:長谷部結衣、堀内亮、香月夏子.

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