世界で爆増する電力需要 2034年までに年間2900テラワット

この電力需要の爆発的な増加は、バージニア州だけの問題に留まりません。

世界中で7000ものデータセンターが建設済み、または建設中です。

そのエネルギー消費量は、2034年までに年間2900テラワット時を超えると予測されており、これはインドの年間消費量のほぼ2倍に相当します。

この需要を満たすための十分な電力は、現在、世界には存在しません。

テック企業のリーダーやデータセンター開発業者、エネルギー会社へのインタビューからは、企業が電力網に接続するまでに何年も待たされるという現実が明らかになっています。

これは、AI開発競争で優位に立とうとするシリコンバレーの野望をも危うくする状況です。

「制約なき開発」に広がる不安 問われる人類の判断

バージニア州の地域住民は「責任あるデータセンター開発」を求めて州都へ陳情に赴いています。

彼らはデータセンターそのものに反対しているわけではありません。

ただ、交通機関に速度制限や安全基準、騒音制限があるように、データセンター業界にも適切な法律や基準が設けられるべきだと訴えているのです。

この闘争の中心人物の一人であるエレナ・シュロスバーグ氏は、議員たちに「歴史が今まさに書かれている。歴史の教科書にどう書かれたいか」と問いかけます。

彼女が活動を始めた当初はデータセンターを知る人も少なかったものの、今やその問題が広く認識されるようになりました。

エレナ氏は訴えます。

「このまま『制約のないデータセンター開発』が続けば、私たちの安定したエネルギー供給、きれいな空気と水、そしてバージニア州の美しい景観が失われるのではないかという懸念が強まっています。地域住民の生活が犠牲にされ、人類史上例のない電力需要にどう応えるのか、もはや“夢物語”では済まされない状況です」

データセンターは、私たちの現代生活に不可欠なインフラです。

しかし、その急速な拡大がもたらす電力消費の増大、地域環境への影響、そして社会の持続可能性への問いは、私たち全員が真剣に向き合うべき課題となっています。

私たちは今、AIという新技術との数十年、数百年にわたる付き合いの始まりにいます。

この途方もない力を手にした人類が、その過程で人間性を失わず、デジタル体験だけでなく現実世界との関わりを大切にし、良い決断を下せるかどうかが問われているのです。