(ブルームバーグ):ロシアは自国領内の奥深くでドローン攻撃が増加していると報告しており、ウクライナ国境から2000キロメートル近く離れた地点にまで達した例もある。戦争が拡大する中で、同国の防空体制がさらに試される形となっている。
ドローンは、ウラル山脈にある工業地帯や、シベリアの産油地域であるチュメニでも確認された。

ウクライナは昨年末、自国のドローンがロシア国内の最大1800キロ先の標的を攻撃可能だと発表していた。それでもロシア当局は、こうしたドローンのいずれもウクライナのものと断定していない。ウクライナ政府も大半の攻撃について認めておらず、ロシア領内奥深くで相次ぐ攻撃の正体は、ますます謎を深めている。
ゼレンスキー大統領は、治安当局トップのヴァシル・マリューク氏との攻撃作戦に関する会合後、SNSに「ウクライナの長距離ドローンミサイルは、ますます高い効果を示している」と投稿。「ロシアの防空システムの破壊でも大きな成果を上げている」と述べた。
8日にはモスクワの東約1700キロに位置するスヴェルドロフスク州で、複数の工業施設がドローン攻撃の脅威に対する予防措置を講じたと、現地当局がテレグラムで発表した。地元メディアによれば、従業員の避難やモバイル通信の制限などが実施されたが、同地域で実際に攻撃があったかどうかは明らかになっていない。
ただ今週には、チュメニ市の工業施設構内で3機のドローンが破壊されたと当局が発表した。チュメニはウクライナ国境から約2000キロ離れており、地元メディアによると、付近の製油所周辺では防空システムが作動する音が確認されたという。
英国のシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)の軍事航空専門家、ダグラス・バリー上級研究員は「射程が延びれば、ウクライナはロシア奥深くでより多くの標的を脅かすことができ、ロシアの防空体制維持はさらに困難になる」と指摘する。
9月中旬以降、ウラル山脈にあるペルミ地方でも2カ所でドローンが撃墜されている。標的には、ベレズニキにある爆薬の主要成分である硝酸アンモニウムの大手生産拠点や、グバハにあるメタフラックス・ケミカルズの工場が含まれていた。
モスクワ在住の無人機専門家デニス・フェドゥチノフ氏は「こうした射程はウクライナからでも達成可能だろう」とした上で、ロシア領内に深く侵入するほど、ウクライナ国外から発射された可能性が高まるとの見方を示した。
6月には、ウクライナがトラックに隠したドローンを使ってシベリア東部の戦略的空軍基地を攻撃する大規模な作戦を実施した。このときゼレンスキー大統領はSNSへの投稿で、3つの時差地域にわたりロシア国内にいる人々の手で、117機のドローンを使用したと述べていた。
原題:Drone Attacks Are Now Seen 2,000 Kilometers Inside of Russia (1)(抜粋)
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