財務省が29日に実施した2年利付国債入札は強い結果となった。応札倍率が過去12カ月平均を上回り、2024年10月以来の高水準となった。日本銀行の利上げ期待が回復して利回りが上昇する中、投資家の需要が確認された。

入札結果によると、応札倍率は4.47倍だった。過去12カ月平均は3.99倍。最低落札価格は100円11銭と、市場予想の100円09銭を上回った。小さいほど入札の好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は5厘と、前回の1銭2厘から縮小した。

米国が日本や欧州連合(EU)と新たな貿易協定で合意した。いずれもトランプ大統領が当初示唆していたほどの高関税にならず、日本や世界景気への影響が想定より限られるとの見方から、日銀の早期利上げ観測が復活。金融政策の変化に敏感な中期債への売り圧力が強まり、新発2年債利回りは一時0.86%と、3月に付けた08年以来の高水準に接近した。

りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは「0.85%近傍の金利水準は日銀利上げをある程度織り込んでおり、投資家からの需要がある」とし、2年債入札は強い結果と述べた。

入札結果を受けて、2年債利回りは前日比2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い0.82%、新発10年債利回りは1.5bp低い1.55%にそれぞれ低下。長期国債先物中心限月の9月物は上昇幅を拡大した。

複数の関係者によると、日銀は日米関税協議の合意を受けて、企業行動次第では年内に利上げできる環境が整う可能性があるとみている。翌日物金利スワップ(OIS)市場では、年内の利上げが8割弱の確率で織り込まれている。

2年債には余資運用の一環としての「キャッシュつぶし」や、金融機関が日銀から資金を借り入れる際に提供する担保、いわゆる日銀適格担保としての需要が根強い面もある。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、先週末に日銀の年内利上げ観測が高まった場面でそれほど債券売りが広がらず、「金利の先高観が強まっていない状態で入札を迎えることができた」こともしっかりした入札結果につながったとの見方を示した。

(第6段落以降を追加し、更新しました)

--取材協力:清原真里、グラス美亜.

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