先週19日、サンフランシスコ発ドバイ行きのエミレーツ航空が離陸する直前、トランプ米大統領が「H-1Bビザ」申請に10万ドル(約1480万円)の手数料を課す決定を下したとの話が機内の乗客の間で広がり始めた。

乗客は最初戸惑っていたが、急速に混乱が広がり機内は騒然となった。SNSに投稿された機内映像によると、乗客らは立ち上がってスマートフォンの画面を確認しながら通路を歩き回り、エアバスA380型機から降ろして欲しいと客室乗務員に訴えた。エミレーツ航空EK226便はドバイ国際空港に向け、15時間のフライトを予定していた。

通常、客室の扉が閉まった後に乗客が降機することは認められていないが、エミレーツの機長は機内アナウンスで「エミレーツとしては前例のない状況だが、現在の状況を理由に渡航を望まない乗客がいると認識している」と述べ、まったく問題はないので「降機を希望する人は、どうぞそうして欲しい」と続けた。機内映像はブルームバーグ・ニュースが確認した。

エミレーツにはコメントを求めて連絡を取ったが、これまで返答は得られていない。

トランプ氏による突然のH-1Bビザ申請料引き上げは、広く利用されている同ビザの保有者に混乱と不安を巻き起こしている。H-1Bビザの70%超はインド人が保有しており、その多くがインド系IT企業を通じて雇用されている。

今回の変更についてトランプ政権は、不正利用を排除しつつ正当な申請を促進するための包括的計画の一環だと説明している。だが新方針を巡る不透明さから、マイクロソフトやアマゾン・ドット・コム、アルファベットなど一部テクノロジー企業は従業員に対し、国外渡航を控えるよう警告を出す事態となった。これらテクノロジー企業は、H-1B制度の恩恵を特に大きく受けている。

インド人はアラブ首長国連邦(UAE)で最大の人口を占め、ドバイを代表する航空会社であるエミレーツは毎週、インドの9都市へ167便を運航している。世界有数のハブ空港であるドバイ国際空港では、インド行きの便が最多となっている。

今回エミレーツ機から実際に何人が降機したかは不明だが、離陸前の混乱は大幅な遅延につながった。航空追跡サイトのフライトレーダー24のデータによると、同便は定刻より3時間40分遅れてドバイへ向け離陸した。

原題:On a Dubai-Bound Jumbo Jet, Trump’s H-1B Visa Fee Creates Chaos(抜粋)

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