(ブルームバーグ):トランプ米政権が高度外国人技術者向け就労ビザ「H-1Bビザ」に高額手数料を課す方針を示したことを受けて、米国の医師不足を一段と深刻化させ、地方病院の運営を難しくする恐れがあると、医療団体が警告した。
米国医師会(AMA)のボビー・ムッカマラ会長は今回の措置により、とりわけ地方や医療過疎地に対して、高度な訓練を受けた医師の供給が断たれる危険があると述べた。
トランプ米大統領は19日、H-1Bビザ制度を大幅に見直す大統領令に署名し、申請に10万ドル(約1500万円)の手数料を課す方針を表明。ハイテク業界や高学歴の外国人留学生の間で衝撃が広がった。ホワイトハウスは20日、新方針は既存のビザ保有者には適用されないと説明した。
さらに22日には、医師は高額手数料を免除される可能性があるとも述べた。ホワイトハウスのロジャース報道官はブルームバーグ・ニュース宛てのメールで「布告には潜在的な適用除外が認められており、その中には医師や研修医が含まれ得る」と語った。
医療機関はしばしばH-1Bビザで研修医や医師を雇用している。ムッカマラ氏は、世界の医学部卒業生は「われわれの医師人材の重要な一部」だとし、彼らが米国で研修や診療を行うことが難しくなれば「患者の待ち時間は長くなり、診療を受けるために一段と遠くの病院に向かう必要が出てくる」とブルームバーグ・ニュースへの声明文で語った。
また、今回の変更が米国に優秀な人材を呼び込む経路を断ち、世界屈指の医学・科学研究を長年支えてきた原動力が失われる恐れがあるとの声も出ている。
医療研究機関KFFがまとめた連邦政府のデータによると、米国では7600万人以上がプライマリーケア(一次診療)医師が不足していると認定された地域に居住している。
米国市民権・移民局(USCIS)の連邦データによれば、メイヨー・クリニック、クリーブランド・クリニック、セント・ジュード小児研究病院など著名な医療機関がH-1Bビザの主要なスポンサーとなっている。メイヨーでは300件超のビザが承認されており、手数料が上がれば大規模医療システムの人件費は数百万ドル単位で増加する可能性がある。
クリーブランド・クリニックの広報担当者は政策を精査中だと述べた。メイヨーは21日時点でコメントの要請に応じていない。セント・ジュードの広報担当者はコメントを控えた。
米国に医師や看護師を多く送り出すインドの医療従事者の間では、今回の高額手数料に対する懸念が高まっている。送金サービス会社レミトリーによれば、米国内の外国出身医師のうち、インドは約22%を占める。
原題:‘Patients Will Wait Longer:’ Skilled Visa Fee Alarms Doctors (1)(抜粋)
--取材協力:Satviki Sanjay、Jinshan Hong.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.