U字型カーブとエイジング・パラドックス

働くシニアが増加する中で「いきいきと働く」ためには、「ワークエンゲージメント」と「ウェルビーイング」がキーとなるといわれている(高尾,2024)。

年齢別に見た幸福度は若い時に高く、中年期に最も低く、50代後半から上昇するU字型であることが知られている。

加齢により様々な喪失や衰えがあるはずなのに幸福度が高まっていくことをエイジング・パラドックス(矛盾)という。

石山(2023)によると定年前後に役職定年や定年再雇用などでワークモチベーション(仕事への動機・意欲)が低下するが、新しい仕事の醍醐味を見出す、周囲から頼りにされる、上司の親身なサポート等により仕事の価値観が変わり、モチベーションが徐々に向上しU字型をたどる傾向がある。

主体的に仕事の創意工夫を行い、専門性を高めるための自律的な学びや自分のキャリアへの関心や好奇心を持ち、新しい役割に順応することでワークエンゲージメントを向上させる効果がある。

また、新たなスキルや知識を深めることが生涯を通じた長期的なウェルビーイングにつながるという(高尾,2024)。

働くミドル・シニアのライフキャリアデザインでは、ワークキャリアとともにファイナンシャル・ウェルビーイングも幸福度をあげる要素の一つである。

定年延長等で安定した収入を得る機会が延びることで資産形成を検討するタイミングが60歳以降になる懸念もある。

働き方などと同時に早くから意識して将来の資金計画の準備を始めることも大切だ。

ウェルビーイングに向けた一歩をいつから・何から始めるかは自分次第。

ミドル・シニア期を「たそがれ」として消極的に捉えるのではなく、ウェルビーイング実現のために積極的に行動することが今後ますます重要になっていく。

【引用・参考文献】

・高尾真紀子(2024)「シニアがいきいきと働くということ(働くシニアのウェルビーイング)」連合総研DIONo.403

・石山恒貴(2023)『定年前と定年後の働き方―サードエイジを生きる思考』光文社

・Blanchflower,D.G.(2021) Is happiness U-shaped everywhere? Age and subjective well-being in 145 countries, Journal of Population Economics,34,575–624

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 人財開発コンサルティング事業部 チーフコンサルタント 山本 玲子)