シンガポールの大規模な高級住宅開発プロジェクトが購入予約の受付を開始したものの、申し込みはわずか数戸にとどまった。同国不動産市場が活況を呈する中で超高額物件の販売は振るわない状況だ。

「Wレジデンシーズ・マリーナ・ビュー」の予約受付は12日に始まったが、週末に予約が入ったのは全683戸のうちわずか2戸だった。事情に詳しい複数の関係者が、非公開情報だとして匿名を条件に明らかにした。この物件はシンガポールの中心業務地区(CBD)の中心部に位置し、世界的な金融機関や多国籍企業が入居する超高層ビル群のすぐ近くにある。

販売予定価格は1平方フィート当たり約3200シンガポール・ドル(約37万円)からで、最も安い1ベッドルームの住戸でも180万シンガポール・ドル。ブルームバーグ・ニュースが確認した販売資料によると、5ベッドルームの物件価格は1160万シンガポール・ドル以上となる。

同プロジェクトの低調な滑り出しから、シンガポールのダウンタウンのウオーターフロントに建つ高級タワーに富裕層を呼び込むのに、不動産デベロッパーがいかに苦労しているかがうかがえる。政府は2023年、外国人の不動産購入者に対し、既に高水準にあった印紙税の税率を2倍に引き上げた。

一方、地元住民の間では、学校など生活利便施設により近い郊外の民間住宅への関心が高まっている。

同じ週末、ダウンタウンの超高級物件から約9キロ離れた場所にある大衆向け集合住宅プロジェクト「リンデンウッズ」は、予約受付の開始初日に全343戸の94%余りを販売。新たな規制が7月前半に導入されたにもかかわらず、ほぼ完売となった。1平方フィート当たりの平均価格は約2450シンガポール・ドルだった。

シンガポールの民間住宅価格はこの5年で約40%上昇している。しかし、CBDなどの高級住宅街を含む都市中央部(CCR)内の集合住宅価格の上昇率は約19%にとどまっている。

 

Wレジデンシーズ・マリーナ・ビューの開発は、マレーシアのデベロッパー、IOIプロパティーズ・グループが手がけている。同社は21年にこの土地を15億シンガポール・ドルで取得した。プロジェクトの管理はマリオット・インターナショナルが担う予定だ。

IOIの広報担当者は、プライベートプレビューに招待された人々から「強い関心」が寄せられていると指摘。このエリアでは「新規プロジェクトが相次いでいるため、買い手が慎重な姿勢になるのは当然だ」と述べた。

不動産ポータルサイト「モーグル・ドット・エスジー」のリサーチ責任者ニコラス・マック氏は、都市中心部の物件の「需要低迷を受けて、デベロッパーは土地取得計画により慎重となる公算が大きい」と予想し、「価格競争は何としても避けようとするだろう」との見方を示した。

原題:Singapore Luxury Condos’ Early Struggle Shows Boom’s Limits (1)(抜粋)

--取材協力:Gabrielle Ng.

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