スポーツ賭博ブームの波に乗ろうとする動きが、ウォール街で鮮明になっている。クオンツ運用大手AQRキャピタル・マネジメントの共同創業者クリフ・アスネス氏は、同社がスポーツ賭博事業への進出を検討しているとし、「これは当社にとって始まりにすぎない」とブルームバーグのポッドキャストで語った。

金融とギャンブルの境界が曖昧になりつつある中、ウォール街ではスポーツの試合結果と連動した金融取引を扱う予測市場に注目が集まっている。取引所運営大手のインターコンチネンタル取引所(ICE)は、予測プラットフォームのポリマーケットに最大20億ドル(約3100億円)を投資する計画を発表。クオンツ取引を扱うサスケハナ・インターナショナル・グループもスポーツに特化した部門を強化し、予測市場大手カルシのマーケットメーカー(値付け業者)であることを明らかにしている。

AQRが検討しているのは試合の方向性を巡る賭けなのか、あるいは市場のマーケットメークを手がけるのか、アスネス氏は説明を控えた。

1998年にアスネス氏らが創業したAQRは、クオンツ運用で知られており、スポーツ分析にも応用できると同氏は語る。野球やバスケットボールなどスポーツの勝敗分析に関する共著があるトビアス・モスコビッツ教授(イエール大学経営大学院)は、AQRのプリンシパルを務める。

アスネス氏は野球の統計分析を題材にしたマイケル・ルイス氏の著書「マネーボール」を引き合いに、こうしたスポーツ分析が「われわれの仕事と非常によく似ている」と語った。自身も2018年に共著した研究論文で、アイスホッケーの試合で負けている時に「どの時点でゴールキーパーをベンチに下げるべきか」を数理的に分析している。

「残り時間5分あるいは6分の時点で、1点差で負けている場合は、ゴールキーパーをベンチに下げてオフェンス要員を投入するのが正解だ」とアスネス氏は論じる。「人は正しいと分かっていても、世間体を恐れて行動できない。それは投資でも同じ」と語った。

アスネス氏は一方で、ギャンブルには批判的な姿勢を崩さず、市場の「ゲーム化」に懐疑的な見方を示した。

「娯楽の範囲なら何をやろうが構わない」と同氏は話す。「しかしスポーツ賭博に興じる20代の男性で、もはやファンとしてチームを応援していない若者を多く知っている。彼らは自分が賭けた通りに選手が行動するよう応援しており、それは非常に残念なことだ」と語った。

原題:Cliff Asness Says AQR Is Exploring a Push Into Sports Betting(抜粋)

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