「ChatGPT」の登場以来、世界を席巻する生成AIブーム。その中心にいるのがAIスタートアップのOpenAIです。しかし、その華々しい成功の裏では知られざるコストが発生していました。

今年5月に米英で発売され話題を呼んだ、ある1冊の本があります。

『Empire of AI』、日本語では「AIの帝国」という意味のタイトルです。

この本の著者で、ジャーナリストのカレン・ハオ氏は、AI企業を現代の「帝国」として捉え、その構造的な問題に警鐘を鳴らしています。

ハオ氏が今回、TBS CROSS DIGの取材に応じました。ハオ氏の洞察は、私たちがAIとどう向き合うべきか、テクノロジーの未来をどう見通すべきか、重要な視点を与えてくれます。

シリコンバレーへの“幻滅”からジャーナリストへ

ハオ氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)で機械工学を学びました。気候変動などの社会課題をテクノロジーで解決したいという思いから、卒業後にサステナビリティの領域に取り組むスタートアップに就職します。

しかし、シリコンバレーの理想と現実のギャップに直面します。

「シリコンバレーの革新モデルは、利益を生むテクノロジーの開発が原動力で、必ずしも公共の利益を追求してはいないと気づきました。

むしろ、公共の利益に反するテクノロジー導入が進んでいると感じ、自分が本当にやりたいことではないと別の道を志したのです」

その道がジャーナリズムでした。当初は環境問題を専門にするつもりでしたが、工学のバックグラウンドからテクノロジー担当に。これが転機となり、テック業界で感じた問題意識を深く掘り下げることになります。

そしてMITテクノロジーレビュー誌に在籍していた際、AI報道を専門とするようになり、2019年にOpenAIとの接触が始まりました。