(ブルームバーグ):トランプ米大統領は16日、合成麻薬フェンタニルに関係する刑罰を強化する法案に署名し、「正義への歴史的な一歩だ」と表明した。致死性の高い薬物がもたらした公衆衛生上の危機に対処する新たな取り組みと位置付けている。
ホワイトハウスでの署名式には、薬物乱用対策に取り組む団体の支援者や法執行機関関係者、フェンタニルで命を落とした市民の家族らが同席。トランプ氏は「きょう、麻薬の売人や麻薬密輸業者、犯罪組織に正義の一撃を加える」と語った。
成立した「HALTフェンタニル法」は全てのフェンタニル関連物質を恒久的に規制物質法の最も厳しい規制区分「スケジュール1」に分類するもの。
ホワイトハウスによると、これにより違法なフェンタニル関連物質を「所持、輸入、流通、または製造」する者に対し、他のスケジュール1薬物と同様に刑罰の強化が適用される。
トランプ氏は「これらの違法薬物を密売し摘発された者には、最低10年の懲役刑が義務的に科される」と説明。「われわれはドラッグの売人や密売人を街から一掃し、広がった薬物過剰摂取が終息するまで決して手を緩めない」と強調した。
トランプ氏はフェンタニルに関係する公衆衛生危機を、米国の国境警備強化や不法移民取り締まり、さらには関税政策の一部根拠としても利用。フェンタニル密輸を理由に、米国の主要貿易相手であるカナダやメキシコ、中国に追加関税を課している。
また、中国がフェンタニル製造に用いられる前駆物質の取り締まりを怠っていると非難し、米国に接するカナダとメキシコに対してもフェンタニルの流入を阻止していないと批判してきた。
中国は先月、この薬物の製造に使われる2種類の化学物質の管理を強化すると発表。これは米中間の貿易関係を維持するための譲歩とみられている。
トランプ氏は16日、「中国は協力してくれている。フェンタニルに関しては長年ひどい状況が続いていたが、私が政権に就いてから彼らと対話を重ねており、大きな進展が見られる」と記者団に語った。
フェンタニルは、手術後や複雑な病状に伴う痛みの治療に使われる強力な合成オピオイド鎮痛薬で、比較的安価に製造でき、違法に流通する場合もある。
違法フェンタニルはここ10年ほど、米国内での薬物過剰摂取による死亡の増加に拍車をかけてきた。共和、民主両党の関心を集めるとともに、数少ない超党派の協力分野の一つとなっている。
原題:Trump Signs Bill to Toughen Penalties For Fentanyl Trafficking(抜粋)
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