英国債市場の担い手が変わりつつあり、今こそ安定が必要な同国政府にとって英国債が新たな脆弱(ぜいじゃく)性の要因となっている。

イングランド銀行(英中央銀行)と予算責任局(OBR)は今週、需要の構造的変化により、国債が極端な価格変動や、場合によっては投げ売りにさらされるリスクがあるとして警鐘を鳴らした。

かつて年金基金や英中銀といった安定した買い手が支配していた市場は、現在ではヘッジファンドや国外投資家といった流動的な投資家の動向に大きく左右されるようになっている。

国外投資家が英国債全体の3分の1を保有している

英国の財政は自ら設定した財政ルールの上限に近づいており、経済政策は英国債の利回り動向と切り離せない関係になっている。こうした中で、英国債市場に構造的な変化が生じつつある。

アーテミス・インベストメント・マネジメントのファンドマネジャー、リアム・オドネル氏は「英国は世界的な需給構造の著しい変化に直面している」と述べ、「過去10-15年で英国債最大の買い手のうち2つが市場から撤退している」と指摘した。

2022年に当時のトラス政権の崩壊を招いた大規模な英国債売り以降、同国債は財政拡張の兆しに敏感に反応する。直近の例では、リーブス財務相の交代観測が利回りの急上昇を招いた。

落ち込む年金基金からの需要

英国は長年にわたり確定給付型年金基金からの旺盛な需要を頼りにしてきた。しかしその需要は減少傾向にあり、同時に英中銀も量的緩和(QE)で膨らんだ国債の保有を圧縮している。その一方で、政府の借り入れ需要増により国債供給は拡大している。

供給が拡大する中で、この2つの大口購入者が退場すれば、誰かがその穴を埋める必要がある。グローバル運用のファンドが参入しているものの、近年の欧州連合(EU)離脱問題やトラス政権の混乱などで英国市場が荒れるのを目にしており、英国債に対する意欲は相場次第というのが大きい。

オドネル氏は「英は投資を必要としているが、政治の混乱を考えると、それを期待するのは難しい」と述べた。

原題:Gilts Risk More Turmoil as Swift Sellers Replace Steady Buyers

(抜粋)

--取材協力:Isabella Ward、Leonard Kehnscherper、Andrew Atkinson、Alice Gledhill.

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