財務省が10日に実施した新発20年国債入札は無難な結果となったが、参議院選挙を巡る金利上昇への懸念を払拭するには至らなかった。

入札結果によると、投資家需要の強弱を反映する応札倍率が3月以来の高さとなった。最低落札価格は100円05銭と市場予想100円10銭を下回った。小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は18銭と前回の28銭から縮小し、1月以来の小ささとなった。

SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは「応札倍率、テールとも悪くなく、無難な結果だった。前場に超長期債が強含んで利回りが低下したので心配したが、それなりに札が集まった」と話す。

一方、クレディ・アグリコル証券のマクロストラテジスト、松本賢氏は「選挙後の政治情勢がどう展開するかを見極めるまでは不透明感が残る」とし、「財政拡大が続くとの現在の見方が維持される限り、超長期債の利回りが大きく低下することはない」との見方を示す。

入札結果を受けて、先物中心限月9月物は前日比7銭安の138円62銭まで下げたが、その後138円81銭まで上昇。現物債市場では新発10年国債利回りが一時1.5ベーシスポイント(bp)低い1.485%まで低下した。20年債利回りは午前に2.5bp低い2.485%に低下し、入札後も同水準にとどまっている。

今回の入札は波乱なく終わったが、債券相場の上昇(金利低下)がこのまま続くとの見方は少ない。今月下旬の参院選後に拡張的な財政政策が取られるとの観測から金利上昇圧力がかかりやすいためだ。

参院選では与党が現金給付を公約に掲げる一方、野党は消費税の減税を主張している。また、トランプ米大統領は8月1日から日本に対して25%の関税を課すとしており、仮に関税発動となれば日本経済は打撃を免れず、結果として財政拡大への圧力が一層強まる可能性がある。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「参院選後も拡張的な財政政策が続きそうで、超長期債にとっては引き続き逆風が吹く」と予想。「金利が下がりにくい環境が続く」とみている。

(市場参加者の見方やチャートを追加し、全体を更新します)

--取材協力:グラス美亜、清原真里、日高正裕.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.