10日の日本市場では株式が反落。日米の関税交渉や参議院選挙を巡る不透明感から売りが優勢だった。20年利付国債入札が波乱なく消化され、債券は上昇。円相場は1ドル=146円台前半で推移している。

トランプ米大統領は9日、新たに8カ国に対する関税通知の書簡を公表した。通商合意が成立しない場合、これまでの送付分と同じく8月から新税率が適用される。

大和証券の坪井裕豪チーフストラテジストは、ブラジルへの具体的な話が出てきたことなどから、市場の目線が再び関税に向いたと指摘。セクター別の関税が予定される半導体や医薬品は、業績への影響に「どうしても不透明感が残ってしまう」と話した。

ブラジルの関税は50%の税率が通知され、7日以降に通知のあった関税率の中で最も高水準となった。当初は世界一律10%の基本税率だけで、上乗せ関税はゼロとされていた。

株式

東京株式相場は反落。米関税の不透明感に加え、為替が前日午後と比べて円高で推移したことも重しになった。電気機器や、前日に上昇した医薬品や自動車に利益確定売りが優勢だった。

りそなアセットマネジメントの下出衛チーフストラテジストは、米国株が高値を更新する中、トランプ大統領は強硬姿勢になりやすいと話す。日米交渉には期待できないとの見方を示した。

富国生命保険の野崎誠一有価証券部長は「自民党の苦戦が連日報じられるなど参議院選挙の不透明感が高まり、日米の関税交渉がうまくいかなくなるリスクが意識されている」と述べた。

一方、米エヌビディアの時価総額が一時4兆ドル(約580兆円)を突破し、人工知能(AI)需要拡大への期待からアドバンテストや古河電気工業は買われた。

債券

債券相場は長期債を中心に上昇。警戒された20年国債入札を波乱なく終えたことで買い安心感が出た。超長期債も買われたが、3時過ぎに売りが出て上げ幅を縮小した。

みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは、20年債入札は無難な結果だったものの、流通市場で売りが出ていると指摘。40年債入札や8月の30年債入札の結果を見てからでないと気は抜けないと述べた。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、入札は大崩れはしなかったがあまり良くはなく、「グレーな感じだ」と指摘。「参院選後も財政拡張的な政策が続きそうで、超長期金利は下がりにくい」との見方を示した。

入札結果は最低落札価格が100円5銭と市場予想100円10銭を下回り、小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は18銭と前回の28銭から縮小して1月以来の小ささとなった。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.15倍と3月以来の高水準となった。

新発国債利回り(午後3時時点)

為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=146円台前半で推移。トランプ米大統領が8月1日から銅に50%の関税を課すと発表したことを受けて一時145円台後半まで上昇したが、その後はドルが買い戻された。

関税を巡る報道後の為替相場の反応について、ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは「米国株先物が下落し、条件反射的にリスク回避でドルが売られた」と語る。あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、日本銀行の利上げ観測後退を受けて円が前日に大きく売られた反動も出たと述べた。

一方、SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、月末に開かれる日銀の金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)について「どちらも無風だろうが、どちらかというとトランプ関税を受けた日銀のハト派傾斜の方が気にかかる」と指摘。持続的な円高進行について懐疑的にみていた。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:山中英典、堤健太郎、横山桃花、清原真里.

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