日本銀行が10日に開いた7月の支店長会議では、人手不足から来年度も継続的な賃上げに意欲を示す一方、トランプ関税の影響を懸念する企業の声が報告された。会議での報告をまとめた「各地域から見た景気の現状」を公表した。

日銀が金融政策運営で重視している賃上げについて、人手不足感が強い企業を中心に「継続的な賃上げが必要」との声が報告された。一方、米関税政策の影響で企業収益が下振れた場合、今年度の冬季賞与を減額する可能性を指摘する企業の声が聞かれた。来年度の賃上げの実施に懸念を示す企業もあったとしている。

日本銀行本店

トランプ大統領は7日、日本からの輸入品に25%の関税を8月1日から賦課すると発表した。最終決定は今後の政府間の交渉次第だが、高関税が企業収益を圧迫すれば、高水準が続く賃上げ環境に水を差しかねない。日銀の追加利上げを占う面から各地の企業の声が報告される支店長会議が注目されたが、当面は関税の影響を見極める局面が続きそうだ。

記者会見した正木一博理事・大阪支店長は、米関税政策が企業収益に与える影響を懸念する先は多いとしつつ、企業の中に「人手不足が構造的で不可逆的との認識は広がっている」と指摘。その上で「賃上げの動きは継続していく蓋然(がいぜん)性が高いのではないか」との見方を示した。

乗用車の米国向け輸出にはすでに25%の高関税が課されている。自動車産業が集積する東海地区の上口洋司名古屋支店長は、米関税政策の影響が企業収益の下押しなどで一部は顕在化していると指摘。収益自体は高水準にあるとしつつ、先行きの賃金動向に米関税政策の影響が及ぶリスクを注視していくとの見解を示した。

支店長会議では、設備投資に関しては、米関税による不確実性の高まりを背景に先送りや見直しを検討・実施する動きが見られるとの報告があった。一方、IT関連の能力増強投資や省力化・デジタル化投資などで積極的な投資スタンスが維持されているとの報告も聞かれたとしている。

輸出と生産は、現時点では米関税による影響は総じて限定的にとどまっているとの報告が多かった。ただ、先行きについては、米販売価格の引き上げや世界経済の減速に伴う需要減少を懸念する声が多く報告され、一部原材料の調達困難化の影響を指摘する報告も複数あったという。

会議に合わせて公表した地域経済報告(さくらリポート)では、9地域全てが景気の総括判断を据え置いた。一部に弱めの動きも見られるが、 全ての地域で景気は「緩やかに回復」「持ち直し」「緩やかに持ち直し」としている。

(詳細を追加して更新しました)

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