10日に実施される20年利付国債の入札は、超長期債に対する投資家の需要を占う試金石となる。参議院選挙を巡る財政拡大への懸念が強まる中、超長期債には金利上昇圧力がかかりやすく、入札結果が低調となれば金利の上振れにつながる可能性がある。

参院選後に拡張的な財政政策が取られるとの観測を背景に、国債市場では超長期債利回りが再び上昇し、30年債利回りは3%の大台に乗せて5月に記録した過去最高の3.185%が視野に入る。20年債利回りも2.5%前後と、約25年ぶりの高水準に迫っている。

アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは、銀行や生命保険会社を含む大手機関投資家は、選挙結果と政府の財政方針に与える影響を見極めてから投資を考える姿勢を崩していないと指摘。「20年債入札に積極的に応札する可能性は低い」とみる。

参院選では与党が現金給付を公約に掲げる一方、野党は消費税の減税を主張しており、財政拡張につながりやすい。さらに、トランプ米大統領は8月1日から日本に対して25%の関税を課すとしており、仮に関税発動となれば日本経済は打撃を免れず、結果として財政拡大への圧力が一層強まる可能性がある。

入札結果は午後0時35分に発表される。市場は需要動向を示す応札倍率に注目している。需要の強弱を測るもう一つの重要な指標がテール(落札価格の最低と平均の差)で、値が大きいほど低調な結果とされる。

10日の債券市場では20年国債利回りが前日比2.5ベーシスポイント(bp)低い2.485%に低下。入札に対する過度な警戒感が和らぎ、入札通過後の金利低下を見込んだ先回り買いが入っている。

BNPパリバ証券の井川雄亮マーケットストラテジストは「利回りが2.5%を超える水準では打診買いは試してもいいのだろう」との見方を示した。

前回6月の20年債入札は、急激な金利上昇を受けて財務省が国債発行額を見直した後に実施されたが、結果は振るわなかった。発行額が実際に減額された今月3日の30年債入札でも需要は盛り上がらず、直後に金利が上昇した経緯がある。

みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは「20年債入札が不調となった場合、その影響は流動性の高い長期債にも及び、10年債が売られることになる」と予想する。

国債利回りはここ数日、世界的に急上昇し、米国の30年債利回りは5%に近づき、ドイツ国債や英国債などの超長期利回りも上昇基調にある。

国内で超長期債の主な買い手である大手生保の一部は慎重姿勢を崩していない。明治安田生命保険は日本銀行の金融政策正常化や財政リスクにより超長期金利がさらに上昇すると予想。今後1、2年は積極的な投資を控える方針だ。

(第6、7段落に相場の動きなどを追加し、全体を更新します)

--取材協力:山中英典、清原真里、日高正裕.

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