(ブルームバーグ):ブラジルの通貨レアルと株式相場がアジア時間10日早朝に急落した。トランプ米大統領が、ブラジルからの輸入品に50%の関税を課すと発表したことを受けた動きで、同氏とブラジルのルラ大統領との対立が強まっている。
トランプ氏はブラジル宛ての書簡で、ルラ氏の政敵であり、2022年の大統領選敗北後にクーデターを企てたとして起訴されたボルソナロ前大統領に言及。今回の関税措置について「一部は、ブラジルによる自由選挙、米国人の基本的な言論の自由への陰湿な攻撃が理由だ」とし、政治と直接関係があることを示した。
ボルソナロ氏は大統領在任中にトランプ氏の政治スタイルを模倣していたことで知られる。同氏は法的問題に直面する中でたびたびトランプ氏に支援を求めてきた。
関税の公表を受け、ブラジル・レアルは対ドルで3%近く下落。ブラジル株に連動する上場投資信託(ETF)「iシェアーズMSCIブラジルETF」も、通常取引終了後に一時約2%安で取引された。
トランプ氏が4月に関税措置を公表した際、ブラジルの関税率は最低水準の10%とされていた。トランプ氏がここ数日通知した20余りの関税率の中では、ブラジルが初めて従来から大幅に引き上げられたケースとなる。また米国との物品貿易で黒字を出していない国としては初めて対象となっており、トランプ氏が特に不満を抱いていることを示唆している。
関税公表後、ルラ大統領はSNSへの投稿で、ブラジルはいかなる者からの指図も受けないとした上で、クーデターを企てた者への訴追はブラジルの司法制度の専権事項であり、「干渉や脅しの対象にはならない」とコメントした。
ブラジルにとって米国は中国に次ぐ第二の貿易相手国で、今回の高関税が発動されれば、ブラジルの一部産業に深刻な打撃を与える恐れがある。
トランプ氏はこのほか、ブラジルによる「米企業のデジタル貿易活動に対する継続的な攻撃」を理由に、グリア米通商代表部(USTR)代表に対し、通商法301条に基づく調査を開始するよう指示した。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのブラジル・マクロ経済責任者、ソランジェ・スロウル氏は「これらの関税は、国と国の関係全体が制度的に劣化し損なわれていることを示している。50%の関税は、多くの場合、輸出を不可能にする可能性がある」と指摘した。
原題:Brazil Assets Plunge After Trump Hikes Tariff Rate to 50% (3)(抜粋)
--取材協力:Vinicius Andrade、Leda Alvim、Michael Hirtzer、Ilena Peng.
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