成長には新陳代謝が欠かせない
実質賃金の話をする際に、通常我々が使っている数字は平均の数字です。もちろん実質賃金の平均がマイナスであることは問題で、少しでも早く実質賃金がプラスになることが求められますが、仮に平均がプラスになったとしても、個々人で見れば、実質賃金がマイナスだという方は一定数、存在してしまうことでしょう。全員の実質賃金が一気にプラスになることは、普通、考えにくいからです。
物価も賃金も上がるインフレの時代になれば、生産性の向上によって、賃上げにも差がつくことになるからです。みんなの賃金が上がらなかったデフレ時代との最大の違いが、ここにあります。
「正常化社会」の姿とは
生産性が上がり、賃上げが続く企業もあれば、そうでない企業もある。そうなれば、人の移動も起こります。中長期的に、生産性の上がらない企業から、生産性の高く賃上げが続く企業や業種に人が移動することで、全体(平均)の賃金も上がっていくことになるのです。これが正常な時代の成長の姿です。新陳代謝こそ、賃金上昇と経済成長をもたらす原動力です。そして、ゼロでなくなった「金利」が、そうした新陳代謝を促す作用を持ちます。それが金融正常化の世界です。
日本が目指すべき「正常な」成長社会の実現のために、本当にバラマキが必要なのか、選挙を通じて、改めて考えてみたいものです。選挙戦で語られることに耳を傾けることはもちろん重要ですが、選挙戦で政治家の口から語られないことにも、大事なことがあるように思えます。