企業による情報開示の現状

2023年3月期決算以降、有価証券報告書において「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設された。記載内容は「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標」から成り、このうち「戦略」と「指標及び目標」は各上場企業が重要性を判断して開示することになっている。

時価総額が大きい食品関連事業者を中心に一部の開示状況を確認したところ、有価証券報告書で食品ロスや食品廃棄物等に関する指標や目標について言及する企業は限定的だった。

食品関連事業者にとって食品ロスは重要な課題だが、脱炭素、生物多様性など他にも重要な課題は多いからだろう。

一方、統合報告書やサステナビリティ・レポートなどの媒体で情報を開示している企業は少なくない。

しかし、これらの開示は価値創造のストーリーや持続可能性の取り組み、成果をステークホルダーに開示することを目的としている。取り組み方針に加え、数値目標及び進展状況を開示する企業がある一方、取り組み方針のみの開示に留まる企業も確認された。

また、取り組み内容が異なれば着目する指標も異なる。

食品廃棄に関連する指標として食品廃棄物等や食品ロスが多用されるが、食品廃棄物等と食品ロスは同義ではない。「食品ロス」とは、本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品のことである。

一方、食品リサイクル法で定める「食品廃棄物等」とは、食品が食用に供された後に、又は食用に供されずに廃棄されたもの(食品ロス、可食部)に加え、食品の製造、加工又は調理の過程において副次的に得られた物品のうち食用に供することができないもの(不可食部)を含む。食品廃棄物等と食品ロスを併記する企業と、片方のみを開示する企業が確認された。

また、「商品廃棄量」など企業の取り組みに沿った独自の指標を用いる企業もあるが、中には丁寧に詳細を確認しないと定義が不明瞭な指標もある。

このように、各企業の取り組みを深く理解するには有用である一方、効率的に様々な企業の取り組みを俯瞰し、比較・評価することは容易ではない。