第2のポイント:PB目標達成後の検討、「一定水準の黒字」はどれほどか?
2つ目のポイントは、PB黒字化目標に関する記述だ。
目標達成年度について、従来の2025年度から「2025年度から2026年度を通じて、可能な限り早期」との記載に修正された。
財政目標の後退、とみる向きもあるが、既に25年度予算が決まっている中で、直近の政府財政試算(1月公表)が25年度PB赤字の見込みであり、チューニングの意味合いが強い。筆者は、PB黒字化自体は着実に近づいているとみている。
もっとも、トランプ関税が世界経済を揺るがす中でその不透明感が増していることも事実であり、結局達成可否は経済情勢次第である(経済情勢次第で達成できるくらいまで来ていることはもっと認識されてもよいと思う)。
原案内では「米国の関税措置の影響は不透明であり、その経済財政への影響の検証を行い、的確に対応すべきであり、必要に応じ、目標年度の再確認を行う。」と示されている。妥当な対応であろう。
そして今回、新しく加わった内容が「PB黒字化後」の財政運営についてだ。
「PBの黒字化を達成した後、黒字幅が一定水準を超えた場合には、経済成長等に資するような政策の拡充を通じて経済社会に還元することを予めルール化することについても検討に着手していく。」との記載がなされている。
これを財政緊縮的と取るか拡張的と取るかは微妙なところ。
素直に読むと、黒字化後は政府財政の黒字をただ拡大させるのではなく、民間への還元に余剰分を充てるという意味にはなる。
ただ、PB黒字化後も“一定の黒字幅”に達するまでは財政再建スタンスを続ける、というニュアンスも含んでいる。
この“一定水準”をどこに置くかで印象はだいぶ変わってくる。
“予めルール化”するにはこの“一定水準”の閾値を決めることが必要になる。今後、この線引きが論点となっていきそうだ。