骨太方針の原案からは石破政権の財政政策方針について、いくつかの示唆が得られる。ポイントは1:「減税より賃上げ」の明記、2:PB黒字化目標の修正と黒字化後の対応検討、3:公的制度全般のインフレ調整の大きく3点だ。
第1のポイント:「減税より賃上げ」で減税論を牽制
第1のポイントは「減税より賃上げ」の明記である。
原案では“足元の賃金・所得の水準を前提として減税政策によって手取りを増やすのではなく、賃上げによって手取りが増えるようにする”とされた。
賃上げ重視の方向性自体は従来から示されてきたものであるが、「減税政策によって手取りを増やすのではなく」と野党から上がる減税論を強く否定するものとなっている(なお、当初案では「財源なき減税論」を否定する内容で、もう一段減税牽制の色彩が強い内容だった模様)。
参院選の情勢にも左右されることになるが、少なくとも現与党は野党の減税論を受け入れない姿勢を取ることになる。
一方で、自民党は参院選公約に家計向け給付を盛り込む方針だとも報じられている。減税に否定的な姿勢を取る一方で、低所得者向け給付は毎年恒例となっており、減税はNGで給付はOKのアンバランスはあるようにも思う。
期間や規模が変わらないのならば、マクロの財政への影響という観点では減税と給付に大きな違いはないはずである(もちろん手法によって政策の当たる対象は変わる)。
しばしば、期間限定での実施が困難(一度始めるとやめることが難しい)であることが、減税のデメリットとして示されるが、足元の給付金が毎年の補正予算の恒例行事となっていることからしても、そこに減税と給付の差がさほどあるとも思えない。
また、主に住民税非課税世帯を対象とする低所得者向け給付は、ほとんどがフロー収入の少ない年金世帯の高齢者に給付され、ストックでの線引きはできない。
平均的にはフロープア・ストックリッチの高齢者世帯への給付で、真に困窮世帯にターゲティングができているのか、という問題は長年指摘されている。
しかし、一向にその対応が進む気配はみられない。重要なのは減税か給付か、という二元論ではなく、政策の趣旨に照らし合わせてどちらの手段が優れているのか、を丁寧に議論することではないか。