非効率かつ温室効果ガス増加の原因になるとして敬遠されていた一部のガス火力発電が、予想外の復活を遂げている。人工知能(AI)ブームが電力需要を急拡大させている一方で、発電所の建設や新たな送電網の整備が追いついていないためだ。

オープンAIとオラクル、ソフトバンクグループが共同で進めるAIインフラ投資プロジェクト「スターゲート」が来年、テキサス州に最初のデータセンターを予定通り完成すれば、その約364ヘクタールの敷地には、30万世帯分の電力供給が24時間必要になる。だが、その電力を確保することは、単に送電網に接続すればよいというものではない。

3社と競合するメタ・プラットフォームズが3日、イリノイ州の原子力発電所から20年間にわたる電力購入契約を結んだと発表したのに対し、スターゲートは、小型の単サイクル天然ガス火力に依存している。電力生産の分野では、総じて脇役扱いされてきた技術だ。

スターゲートは、巨大なデータセンターに電力を供給するため、12台の小型発電機を連結することで不足分を補っている。イーロン・マスク氏のAI企業xAI、米投資ファンドのカーライルと仏電力設備大手シュナイダーエレクトリックの合弁会社アルファストラクチャーなど、他の巨大データセンターも、同様の取り組みを行っている。

こうした傾向により、ガス火力発電の人気が急速に増している。また、AIの成長と米電力業界の現状との重大なギャップも浮き彫りになっている。

AIコンピューティングの拡大にとって、今後3年間は要の時期で、グリーン化に取り組んでいるテクノロジー企業は、それを支える都市規模のデータセンターの建設を急いでいる。一方、電力インフラの老朽化により、電力網への接続と電力の利用には数年の待ち時間が生じている。テック大手から大きな需要がある原子力発電も、当面は、新たな電力源としてあまり期待できない状況だ。

スターゲートプロジェクトを推進するデベロッパー、クルーソーの共同創設者カルリー・キャブネス最高執行責任者(COO)は「業界では、迅速な電力供給が急務となっている」と語る。

業界各社は、太陽光発電、バッテリー、さらには原子力発電を含むゼロカーボン型のエネルギー源の探索も進めているとしている。だが、スターゲートを含む多くのデータセンターは、原子力発電へのアクセスが容易ではなく、再生可能エネルギーの信頼性への懸念から、多くが24時間365日稼働可能なガス火力発電を好むようになった。

その結果、より大型で効率の高いガス発電所(複合サイクル方式)の注文が急増した。製造遅延は3-5年に及び、さらに運転開始までに1年かかる状況となっている。そのため、データセンターのデベロッパーは、100ー200メガワット級の単サイクルタービンを何としても確保しようと奔走している。

三菱パワー・アメリカズとシーメンスでは、2025ー26年の納入を目途に、70メガワット以下の小型ユニットの需要が急増している。GEベルノーバでも、より効率の高い複合サイクル設備にアップグレード可能な単サイクルユニットへの需要が増しているという。

シーメンス・エナジー北米部門のリッチ・フォーバーグ社長は、これはエンロンが20年以上前に破綻した時以来、最大規模のガスタービン需要の熱狂だと語った。

気候変動

ガス火力発電への依存度が高まることは、AIの莫大な電力需要が気候変動に与える影響への懸念も呼んでいる。大手テック企業は、従業員からの圧力を受け、数年前に野心的な気候目標を掲げた。だが、アマゾン・ドットコムや、マイクロソフト、グーグルは、新たなデータセンターの建設とAIの開発競争が、長期的な気候変動目標の達成を複雑にする可能性を認めている。

ブルームバーグNEF(BNEF)の推計によると、単サイクルタービンは1メガワット時あたり平均約630キログラムの二酸化炭素を排出する一方、複合サイクル機は約380キログラムだ。

さらに、テクノロジー企業は脱炭素化努力の一環として、企業間電力購入契約に依存していることが多い。一部の事業でクリーンな電力を購入しつつ、エネルギー消費量の多いデータセンターは、化石燃料依存度の高い電力網地域に設置している。BNEFは、データセンターの電力需要は主にガスと石炭発電に依存しているため、二酸化炭素排出量の減少ペースが鈍化すると指摘している。

原題:AI’s Urgent Need for Power Spurs Return of Dirtier Gas Turbines(抜粋)

--取材協力:Emma Sanchez.

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