米ベンチャーキャピタルのスライブ・キャピタルと米投資会社キャピタル・グループが、中国に幹部を派遣した。人工知能(AI)セクターで目覚ましい躍進を遂げる中国への米投資会社による幹部派遣は、中国のAIスタートアップDeepSeek(ディープシーク)がシリコンバレーに与えた衝撃を物語っている。

スライブ・キャピタルの幹部らは最近、中国を訪れ、現地のAI企業やファンドと会合を開いた。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に明らかにした。

同社の創業者は、トランプ米大統領の娘イバンカさんの義弟ジョシュア・クシュナー氏。同氏は訪中しなかったという。

同じ時期に世界有数の資産運用会社でもあるキャピタル・グループも、AI分野の現状を把握するため、幹部を中国に送り込んだ。

ジョシュア・クシュナー氏

今まで注目されなかった中国AI業界に対する関心が、オープンAIの対話型AIに匹敵するプラットフォームをDeepSeekが開発したことで急速に高まっている。ただ、これら企業の中国側との協議が進展しているのか、あるいは実際の出資に結び付くかどうかは不透明だ。

スライブ・キャピタルの担当者は電子メールで、同社は中国に一切投資しておらず、今後もその予定はないと説明した。キャピタル・グループの広報担当者はコメントを控えた。

対中強硬派の懸念

スライブ・キャピタルとキャピタル・グループによる幹部の中国派遣は、米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズへの支援で知られるベンチマーク・キャピタルが、中国系スタートアップのバタフライ・エフェクト(蝴蝶効応)への出資を主導することで合意したタイミングに重なる。

バタフライ・エフェクトは注目を集める新興AIサービス「マヌス(Manus)」を手がけており、創業者は中国出身。

一方で、中国系AIスタートアップへの出資を巡っては、米国の対中強硬派が懸念を強めている。中国の技術インフラを米国資本が支える形になることへの警戒感がワシントンで高まっており、トランプ政権による規制強化の動きと相まって、こうした出資案件は厳しい目にさらされている。

バタフライ・エフェクトは主に中国国外でサービスを展開しているが、ベンチマーク・キャピタルによるマヌス関連投資はシリコンバレーの関係者からSNS上で批判を受けている。

デジタルメディアのセマフォーによれば、米財務省は現在、この取引について調査を進めている。マヌスおよびベンチマーク・キャピタルの広報担当者はいずれもコメントを控えた。

原題:Capital Group, Kushner’s Thrive Visited China to Study AI Scene(抜粋)

--取材協力:Laura Benitez、Anne VanderMey、Kate Clark.

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