(ブルームバーグ):元日本銀行審議委員の桜井真氏は、日銀が今月の金融政策決定会合で議論する2026年4月以降の国債買い入れ方針について、現在進めている減額をいったん停止する可能性が大きいとみている。
トランプ政権の政策の不確実性などを背景に、債券市場は超長期金利が乱高下するなど不安定している。桜井氏は2日のインタビューで、市場の国債消化能力などを踏まえ、国債買い入れの減額を続ければ金利が大きく上昇するリスクがあると指摘。26年1-3月の「月間2.9兆円程度の買い入れを維持し、減額はいったん仕切り直しということでいいのではないか」と語った。
日銀は16、17日に開く決定会合で、昨年7月に決めた国債買い入れの減額計画の中間評価を行う。現在の計画では毎四半期4000億円ずつ減額し、終了時の26年1-3月の月間購入額を2.9兆円に圧縮する。同時に26年4月以降の買い入れ方針も検討するが、市場では減額継続を見込む声が多く、桜井氏の見方は慎重と言える。
桜井氏は、最近の国債入札の状況などから長期・超長期金利はしばらく高水準が続くとし、金利上昇による利払い費の増大が国の財政に及ぼす影響も政府・日銀は懸念しているとみる。ただ、減額はいったんの停止であり、現在の先行き不透明な状況が緩和した段階で、「改めて買い入れをどうするか考えましょうということだ」と述べた。
日銀が5月20、21日に開いた債券市場参加者会合では、機関投資家などから国債買い入れオペの見直しを求める声が出た。27日には、財務省が国債市場参加者を対象に国債発行額についてアンケートを送付していたことが複数の関係者への取材で明らかになり、市場には超長期債の発行減額の思惑も広がっている。植田和男総裁は28日の国会答弁で、超長期金利の上昇がより経済への影響が大きい長期以下のゾーンに及ぶ可能性があることに留意が必要だと語った。
債券市場では5月21日、前日の20年債入札が記録的な不調となったことや日本の財政拡張への懸念から、新発30年債利回りが一時3.185%と過去最高を記録した。2日午後3時時点では2.95%となっている。
政策正常化路線
桜井氏は日銀の金融政策運営について、米政策による不確実性が高い中で「6月は動けない」とみる。もっとも、米中関税協議の合意など関税政策を巡る混乱がひと頃よりも落ち着きつつあるとも指摘。設備投資を中心とした経済データが悪化しなければ、日銀は「一休み状態」となっている利上げを年末にも再開できるかもしれないとの見方を示した。
トランプ関税による内外経済の減速懸念の強まりを踏まえ、日銀は5月1日の決定会合で0.5%程度の政策金利を維持した。新たに示した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で経済・物価見通しを下方修正し、2%の物価安定目標の実現時期を1年程度先送りする一方、見通しが実現していけば利上げを続ける方針は堅持した。
桜井氏は、利上げ再開に向けては、7月公表の6月日銀短観における設備投資計画を第一関門として指摘。そこで意欲の大きな後退がなければ、秋に企業の中間決算などで実際の設備投資や企業収益の動向を確認し、来年の一定の賃上げが見えてくれば、年末利上げの条件が整うとみている。
0.75%程度への利上げが実施されれば、新日銀法施行前の1995年以来、30年ぶりの高水準となる。桜井氏は、その後も経済・物価が見通しに沿って推移すれば、半年から1年程度かけて政策金利を1%程度に引き上げると予想。日銀としては2028年4月までの植田総裁の任期中に「政策金利1%が実現できればいい。可能なら1.5%という感じではないか」との見方を示した。
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