乱立する上場投資信託(ETF)市場で注目を集めようと、派手な宣伝が相次ぐ中、あるアイデアが繰り返し浮上している。著名な投資家の取引を追跡し、その戦略を一般投資家に販売する手法だ。

その最新の参入者はビスタシェアーズだ。同社は今週、ビル・アックマン氏やスタンレー・ドラッケンミラー氏、マイケル・バーリ氏といった著名ファンドマネジャーの保有銘柄を再現するETFの設立を申請した。同社はこれらの著名投資家の規制当局への開示資料を分析し、同様の取引を反映するETFを構築する。これは、ヘッジファンドの神秘性を個人投資家に提供する長年の取り組みの新たなアプローチだ。

ビスタシェアーズは証券取引委員会(SEC)への13F報告書や四半期報告書を精査して、アックマン氏のパーシング・スクエアやバーリ氏のサイオン・アセット・マネジメントなどのポートフォリオを追跡するETFを設立する計画だ。

申請書によれば、例えば「ビスタシェアーズ・パーシング・スクエア・セレクトETF」は、アックマン氏の運用会社が保有していると一般に開示された最大20銘柄から成り、直接またはオプションやスワップを含むデリバティブを通じて保有する。他の7本のETFには、ドラッケンミラー氏のデュケーヌ・ファミリーオフィスやバークシャー・ハサウェイをモデルにした2本が含まれ、同様の戦略を採用している。

しかし、ビスタシェアーズのサービスには注意点もある。資産運用会社が四半期末に規制当局に書類を提出するため、13F報告書にはラグが内在する。つまり、一般投資家が情報を入手する数週間前に戦略は既に実行に移されている可能性がある。資産運用会社が利用しようとしていたトレンドや特徴的な動向が、その時点で既に表面化している可能性もある。

ストラテガス・セキュリティーズのシニアETFアナリスト、トッド・ソーン氏は「特定のマネジャーの保有銘柄に極度の焦点を当てる手法は興味深いが、ラグがある以上、実用性には疑問が残る」と指摘。「マネジャーはいつでも判断を変更できるが、ETFは必ずしもリアルタイムの決定を反映するとは限らない」と述べた。

それでも、この戦略は低コストのパッケージで機関投資家型の手法を広げるという大きな動きに一致し、飽和状態の市場で差別化を図るものだ。

ビスタシェアーズは既に、バークシャー・ハサウェイが保有する銘柄をターゲットにした「ビスタシェアーズ・ターゲット・15バークシャー・セレクト・インカムETF」(証券コード:OMAH)を運用している。その資産は2億ドル(約288億円)を超えており、同社は二匹目のドジョウを狙おうとしている可能性があると、ソーン氏は指摘した。同社はまた、「ビスタシェアーズ・アニマル・スピリッツ・デーリー・2XストラテジーETF」(証券コード:WILD)を近く発売する予定だ。資金流入と資産規模で最も人気のある企業を厳選し、それらに2倍のレバレッジをかけた投資機会を提供する。

ウェブサイトによると、ビスタシェアーズはOMAHを含む合計3本のETFを運用している。同社の共同創業者であるジョン・マクニール氏は以前テスラの社長を務め、リフトでも勤務していたという。同社はコメントの要請に応じていない。

ヘッジファンドの追跡を柱にしたETFの運用成績はまちまちだ。「ゴールドマン・サックス・ヘッジ・インダストリーVIP・ETF](証券コード:GVIP)は目立つ存在で、今年に入ってからS&P500種株価指数を大幅に上回るパフォーマンスを示し、資産は3億2500万ドルを超えている。一方、人工知能(AI)を活用して著名な投資家の知見を活かす「インテリジェント・リバーモアETF」(証券コード:LIVR)は昨年9月に設定以来、資産は1700万ドルにとどまっている。「グローバルXグル・インデックスETF」(証券コード:GURU)は規制当局への提出書類を基にしたプロセスで、特定のヘッジファンドの主な保有銘柄を追跡しているが、2012年から運用されているにもかかわらず、資産は4700万ドルにとどまっている。

ブルームバーグ・インテリジェンスのアタナシオス・プサロファギス氏は「13F報告書はトップファンドマネジャーのポートフォリオを垣間見るまれな機会を提供するもので、投資家は常に魅力を感じてきた」と指摘。「従来、このヘッジファンドカテゴリーはETFの形態で参入するのが難しかった。過去に試みはあったが、投資家がマネジャーの動向に関心を示しても、ETFそのものを購入する意欲は低かった」と述べた。

原題:Ackman, Druckenmiller-Tracking ETFs Are Latest Industry Gambit(抜粋)

--取材協力:Isabelle Lee.

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