(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、米金融政策決定の指針となる枠組みについて、政策当局者らが主要部分の変更を検討していると明らかにした。これには雇用の目標未達に対する見方や、インフレ目標へのアプローチなどが含まれる。
FRBは2020年、金融政策を運営する方針を2つの重要な点で見直した。一つは、インフレ率が2%を持続的に下回った後には、「一定期間」それをやや上回るのを容認するというもの。もう一つは、潜在的なインフレ圧力を阻止すべく失業率が低い局面で先回り的に利上げを実施することはしないというアプローチだ。これは最大雇用の目標「未達」を緩和する取り組みだった。
パウエル氏は15日、米金融政策枠組みに関する会議で講演し、当局者らが「目標未達に関する文言を再考することが適切になるとの考えをこれまでに示唆している。先週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、平均インフレ目標について同様の見解が示された」と述べた。発言は講演原稿に基づく。
現行の枠組みは低金利と低インフレが持続していた時代に設定されたものだと、パウエル氏は認めた。これについては、限られた経済状況に過度に特化したものだとして批判的な声も聞かれていた。
「幅広い経済環境や展開に対応できる強固な合意文書を目指していく」とパウエル氏は表明した。

FRB当局者らは今年、金融政策の運営とその伝達手段に関する中長期的な戦略、つまり枠組みの定期的な見直しを開始した。
この枠組みは、連邦公開市場委員会(FOMC)当局者にとっての指針となるものだ。金利決定にあたる同当局者らは議会から、物価安定と最大雇用という広範な目標達成を義務付けられている。インフレ目標は2%。
2020年に完了した前回の見直しを受けて、FRBは新たな枠組みを採用した。インフレ率が2%を持続的に下回った後は、「一定期間」2%をやや上回る水準のインフレ率を目指すというアプローチで、柔軟な平均インフレ目標(FAIT)として知られる。
パウエル氏はこの日、2020年当時は長期のインフレ期待を2%近辺にとどめることが主要な検討事項だったと指摘。「インフレ期待の安定は当局のあらゆる取り組みにとって極めて重要だ。われわれは現在も2%の目標に完全にコミットしている」と話した。
経済環境は変化
しかし、経済環境は2020年から大きく変化したと同氏は述べ、現在進められている枠組みの見直しは、こうした変化に対する政策当局者の評価を反映するものになると説明した。
「供給ショックがより頻繁、かつ場合によってはより持続的に起こる局面に入っている可能性がある。経済と中央銀行の両方にとって厳しい試練となる」とパウエル氏は語った。
さらに、政策金利が既に低水準にあるため景気の下支えが必要なときに利下げ余地が限られる、いわゆるゼロ金利制約に当局者らが縛られるという見方については、「もはや基本シナリオではない」と言明。ただし、「枠組みがそのリスクに引き続き対応するものであることが賢明だ」と続けた。
原題:Powell Signals 2020 Fed Framework Language on Chopping Block (1)(抜粋)
(第2段落以降に新たな情報、パウエル氏の発言を加えて更新します)
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