8月雇用統計で米労働市場の停滞は鮮明に、9日の雇用統計の年次基準改訂に注目が集まる
9月5日に発表された8月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比22,000人増と、市場予想の75,000人増を下回りました。
なお、7月分は73,000人増から79,000人増へ上方修正されましたが、6月分は14,000人増から13,000人減へ下方修正され、この2カ月合計で雇用者数は21,000人減少しました。また、失業率は4.3%となり、市場予想と一致しましたが、2021年10月以来の高い水準に達しました。
労働市場の停滞が鮮明となった今回の雇用統計の結果を受け、同日の米金融市場は長期金利低下、ドル安、株安で反応し、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む年内25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げ回数が増加しました。
今週は9日に雇用統計の年次基準改訂(2024年4月から2025年3月までの期間、速報値)が発表されますが、大幅な下方修正も予想されており、一段と注目が集まっています。
日本では石破首相辞任で自民党の総裁選挙が焦点に、森山幹事長はフルスペック方式を示唆
一方、日本に目を向けると、石破茂首相は9月7日、首相官邸で緊急記者会見を開き、自民党総裁を辞任する意向を表明しました。
石破氏は辞任の理由として、米国との関税交渉に「1つの区切りがついた」ことを挙げ、また、自民党総裁選の前倒し要求が広がるなか、このまま進めば党内に決定的な分断を生みかねず、それは本意ではない旨も述べました。
これにより、8日に予定されていた総裁選前倒しの判断に関する手続きは中止となりました。
自民党は今後、総裁選の日程や形式を協議する見通しで、党内では出馬に向けた動きが加速することが予想されます。
総裁選の形式については、国会議員票と党員・党友票による「フルスペック方式」と、国会議員票と都道府県連票による「簡易方式」(総裁の任期中の辞任などで選出を急ぐ場合など)がありますが、自民党の森山裕幹事長は7日の記者会見で、フルスペック方式を適用する可能性を示唆しました。
引き続き米雇用と物価には注意、国内市場は積極財政期待や政局の思惑に振れやすい展開か
米国に関しては今週、前述の雇用統計の年次基準改訂(9日発表)や、8月の米消費者物価指数(11日発表)に注意が必要です。
市場予想を上回る雇用者数の大幅な下方修正や、物価の伸びの加速が確認された場合、スタグフレーション懸念が強まり、市場に動揺が広がる恐れもあります。
なお、弊社は現時点で、9月、10月、12月に25bpずつの利下げ予想を維持しており、9月に50bpの利下げが行われる可能性は低いと考えています。
日本については、財政規律派とされる石破氏の辞任により、目先の国内市場は積極財政への期待や政局を巡る思惑に左右されやすい展開が予想されます。
総裁選候補には、小泉進次郎農林水産相、小林鷹之元経済安全保障相、高市早苗前経済安全保障相、林芳正官房長官、茂木敏充前幹事長らの名前が報じられています。
今後は候補者の財政・金融政策の考え方や、与党がどの野党と連携を強化していくかが、国内市場の焦点になると思われます。


(※情報提供、記事執筆:三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩)
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