(ブルームバーグ):トランプ米大統領は、中国製品に課す145%の高関税について、中国側が負担すると主張している。しかし、中国発の主要通販プラットフォームでの価格動向を見る限り、実際には米国の消費者が負担増を強いられている現状が浮き彫りになっている。
格安通販アプリ「Temu(テム)」やファッション通販大手「SHEIN(シーイン)」で販売される中国製品の価格は急騰。一部のキッチンタオルセットは377%も値上げされた。
テムは、中国から直送される商品の輸入関税の負担分を、ほぼ全額米国の消費者に転嫁している。これにより商品の価格は従来のほぼ2倍となった。
シーインでも、4月29日時点で「玩具・ゲーム」「美容・ヘルスケア」の2大カテゴリーで人気上位100商品の平均価格が2週間前と比べ40%余り上昇。家庭用品は20%強、女性用衣料も9%値上がりしている。

トランプ氏および側近は、製造業の国内回帰という長期目標のために短期的な痛みは必要だと主張するが、元世界銀行チーフエコノミストで中国政府の顧問も務める林毅夫氏は、米国で生産される製品の価格は高くなるだろうと指摘する。
同氏は4月に北京で行われた会議で「たとえ2-3年後に米国内で生産体制が整ったとしても、その製品の価格は輸入品より高くなるだろう。また、それまでの間、物価は非常に高くなり、供給も追いつかないだろう」と警鐘を鳴らした。
シーインとPDDホールディングス傘下のテムは30日のコメント要請にすぐには応じなかった。
深圳市越境電子商取引協会の王馨会長は「4月に入ってからアマゾンやウォルマートのサイトで販売される中国製品の価格が最大30%上昇している」と述べた。「この関税水準では、従来の価格設定を維持できないのは当然の流れだ」と指摘した。

米大手小売業者は、まだ店頭価格を引き上げていないが、中国側の仕入れ先が関税負担を拒否する中で、関税コストを米消費者に転嫁すべきか頭を悩ませている。
ウォルマートやターゲットといった米小売り大手は、コスト増の一部または全部を吸収するよう政治的圧力を受ける可能性もある。
一方、ロサンゼルスに倉庫を持つ水泳用イヤホン販売会社HCMOBIの共同創業者、デニス・ジュー氏は「小売業者として、私たちは関税を自ら負担することはしない」と明言している。
原題:Big Price Hikes Undercut Trump Bet China Will Absorb Tariffs (2)(抜粋)
--取材協力:Lulu Shen、Lucille Liu、Denise Lu.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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