年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は30日、機関投資家による上場企業に対するエンゲージメント(目的を持った建設的対話)について、企業側に実施したインタビュー結果を公表した。

世界最大規模の年金基金であるGPIFは年に1度、東証株価指数(TOPIX)構成企業向けにアンケートを行い、運用委託先の資産運用会社のエンゲージメント活動の実態を調査している。今回、初めて企業側とのインタビューを実施し、評価や課題をまとめた。運用会社との対話で投資先の企業価値向上を促すなどのスチュワードシップ活動の改善に役立てる。

GPIFのロゴ

インタビュー結果によると、企業からは統合報告書などを活用し対話が深化しているとの評価を得た。対話のテーマも財務や事業の状況の確認からサステナビリティー、ガバナンス(統治)、資本コスト、効果的な情報開示の在り方などに拡大しているという。それら意見を取締役会などにフィードバックし、自社内での検討に反映しているとの声も聞かれた。

また、社外取締役と機関投資家との対話をここ数年の間に初めて実施したという企業が多く、近年急速に広がっているとも分析した。

一方、個別トピックへの議論の偏重やESG(環境・社会・企業統治)に関する面談では準備不足の投資家がいたなどの指摘があった。短期業績に関する質問が依然として多いとの見方もあった。

株主総会での取締役選任案の議決権行使については、独立社外取締役が半数以上を占めているかなどの外形基準に基づいて行使したという印象があり、実態を踏まえた行使判断を望む声もあった。

GPIFでESG・スチュワードシップ統括課長を務める広川斉氏はブルームバーグの取材に対し、細かな意見を聞くことができ、企業側から見ても「中長期目線の前向きな対話が行われていると改めて確認できた」と説明。議決権行使の在り方などの指摘については、資産運用会社も考え方を積極的に伝えていくことが必要で、「双方の納得感が大事。コミュニケーションを促進していきたい」と述べた。

インタビューは33社のIR(投資家向け広報)担当者などを対象に、2024年4月から12月にかけてGPIF職員が実施した。

(7段落にGPIF担当者のコメントを追記)

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