新卒の4割は入社時から退職も意識

それでは、Z世代は就職時に何を重視しているのだろうか。

東京商工会議所による新入社員を対象にした調査をみると、「処遇面(初任給、賃金、賞与、手当など)」が56%と最も高く、続いて「社風、職場の雰囲気」(54.3%)、「福利厚生」(45.4%)などとなっている。

前述の厚生労働省の調査結果と照らし合わせても、Z世代の新入社員は職場における「処遇」を重視しており、この点では「初任給」の引き上げという施策はそのニーズに応えているといえるだろう。

ただ、「処遇面」を改善することで、新規学卒社員の35%程度が入社3年以内に離職することを防げるのかというと、必ずしもそうとは言い切れない。仮に初任給が引き上げられたとしても、その高水準が2年目以降の賃金にも反映され続けられるかどうかは未定である。

加えて、前述の東京商工会議所の調査をみると「チャンスがあれば転職したい」と回答した新入社員は10年前に比べて14.5ポイント増加しており、2024年度は「将来は独立」と「時期をみて退職」も合わせると、Z世代の新入社員の約4割が入社段階から退職することを想定しているとみられる。

「しっかり自分の価値とスキルを磨いて次のキャリアに活かしたいと思います!」。

これは、今春、初任給を前年度より引き上げると報じられた企業から内定を得たZ世代の大学新卒者から直接聞いた言葉である。それも1人や2人からではない。

「待遇が良いにもかかわらず、これほどまでに入社前から転職が前提なのか」という衝撃を受けたが、Z世代の新入社員の一部にとって転職を視野に入れた就職は「ごく普通の感覚」なのかもしれない。