金融市場のリスク管理に長けていることで知られる米ゴールドマン・サックス・グループは、自社の評判を巡るリスクを大きく見誤っていた。

そのことは、同社の法務責任者キャシー・ルームラー氏が12日、デービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)に電話で辞任する意向を伝えるまでに明らかだった。米司法省が新たに公開した文書により、性犯罪で起訴され勾留中に死亡したジェフリー・エプスタイン元被告とルームラー氏の近い関係が詳細に示されていた。

ソロモンCEOはここ数週間、新情報が相次いで明るみに出る中でもルームラー氏を擁護してきた。同文書では、ルームラー氏がエプスタイン元被告に数年にわたり助言し、時には被害を訴える人々を批判し、元被告のイメージ回復策を練っていた様子が示された。

デービッド・ソロモンCEO

それでも13日、議員らがルームラー氏の議会委員会出席を求めた後も、ソロモンCEOは同氏を「素晴らしい人物」と評価。6月30日にゴールドマンを離れるのは本人の判断だと明確にした。

ソロモン氏はカリフォルニア州ペブルビーチでフロリダ州のデサンティス知事とゴルフトーナメントに参加する直前、「彼女の辞意をやむなく受け入れた」と、CNBCにインタビューで述べた。「この件に関して彼女が以前行った仕事に関する報道が会社にとって雑音や支障となる水準に達していると彼女は考えた」と語った。

今回の件は、金融危機後の批判を受けてレピュテーション管理に一段と力を入れてきたゴールドマンにとって心地良くないものとなっている。ルームラー氏とエプスタイン元被告の関係についてはすでにデューデリジェンスを実施したと同社は説明していた。

事情に詳しい複数の関係者によると、ソロモンCEOが最側近のアドバイザーの1人であるルームラー氏を強く擁護し続けたことは、同社の一部パートナーを困惑させた。ただ、同CEOの怒りを買うことを恐れ、擁護姿勢に異を唱えることをためらう向きも多かったという。非公開の会話だとして関係者が匿名を条件に語った。

関係者によれば、今回の問題は当惑させるものであり、容易に回避可能だったとみるパートナーもおり、ソロモン氏の判断に疑問を持ち、考え直すよう求める方法を非公式に模索していた。

ゴールドマンの広報担当トニー・フラット氏は13日、ブルームバーグ向けの資料で、「パートナーは自らの意見を述べたり、経営陣にそれを伝えたりすることを遠慮しない」と回答。ルームラー氏とエプスタイン元被告の関係を巡る経緯について、同社が以前委託した第三者レビューに引き続き満足しているかどうかについてはコメントを控えた。

ルームラー氏と7年近く前に死亡したエプスタイン元被告の関係は、2023年にウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が両者のつながりを報じたことで広く知られるようになった。議会委員会が公開したエプスタイン関連文書にルームラー氏とのやり取りが含まれていたことから、昨年後半に再び注目を集めた。

だが、議論が熱を帯びたのは1月30日以降だ。司法省が公開した文書には、ルームラー氏の名前に言及した数千通の電子メールが含まれ、両者の関係にさらに光が当てられた。

ゴールドマンはここ数週間、幹部がすでに関係の程度を把握し問題はないと判断していたと株主や従業員に説明し、不満を和らげようとしてきた。最新の文書公開後、フラット氏は数時間以内に発表文を出し、ルームラー氏は取締役会の支持を得ていると説明した。

事情に詳しい複数の関係者によると、現職および元上級幹部の一部は、ソロモンCEOの揺るぎない擁護がゴールドマンの評判に修復不能な打撃を与えかねず、批判に耳を傾けることに消極的な姿勢の表れだと懸念していた。

それでもソロモン氏はCEO就任後に法務責任者に据えたルームラー氏について、「並外れた」そして「優れた」弁護士だと強調。「組織は日々彼女のガイダンスに頼っている」と述べていた。

ソロモンCEOの執務室のすぐ近くにオフィスを構えるルームラー氏は、同CEOの重要な助言者だ。20年にゴールドマンに加わった同氏は、経営陣に厳しい事実を伝えることも辞さなかった。22年には、同僚の前で不適切な発言をしたとしてソロモンCEOの名前が内部苦情で挙がった際、同CEOを擁護していた。

ルームラー氏はまた、全社的な行動委員会を率い、評判リスク委員会の共同副議長も務めるなど、ゴールドマンで重要な役割を担ってきた。同社は12年に取締役会で公共責任小委員会を設けるなど、何年にもわたり評判管理を徹底してきた。

ソロモンCEOのほか、ジョン・ウォルドロン社長やジョン・ロジャース氏、ラッセル・ホーウィッツ氏ら少数の幹部がエプスタイン文書にルームラー氏の名前が記載されたことによる余波の収拾に当たっている。また名誉毀損訴訟に強いトム・クレア弁護士が、複数の外部広報会社とともに記者対応で同氏を擁護している。

昨年12月、ルームラー氏とエプスタイン元被告の親密さを示唆する複数の電子メールが公開され、その中には過体重の人々を何気なくからかうやり取りも含まれていた。同月、ブルームバーグ・ニュースの電話取材で、ゴールドマンの経営委員会の一部メンバーはルームラー氏に関する印象を尋ねられた。応じた6人のパートナーのうち、電子メールを読んだと答えたのは1人のみで、全員が同氏を良き同僚だと述べた。

強い道徳的指針を持つと自ら述べるある幹部は、ルームラー氏を優れた同僚だと話した。別の幹部はルームラー氏がゴールドマンで女性の擁護者として尽力してきたと強調し、自分の休暇中には、わざわざ飼い犬の世話をしてくれたと語った。いずれも電子メールは読んでいなかった。

ルームラー氏の広報担当ジェニファー・コネリー氏は声明で、「ルームラー氏は何も悪いことをしておらず、隠すこともない」と説明。「エプスタイン元被告によって傷つけられた人々に深い同情を抱いており、現在知っていることを当時知っていれば、彼と一切関わることはなかっただろう」と述べた。

原題:Goldman CEO’s Loyalty to Lawyer Rattles Bank Even as She Departs(抜粋)

--取材協力:Sridhar Natarajan、David Voreacos.

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