税収予測が減少する一方、納税者への還付金は増加している。これは米政府の歳入を減少させる要因で、これが続けば、連邦議会が債務上限を引き上げる期限が早まる可能性がある。あるいは、連邦政府の支払いが不能に陥るリスクもある。

この傾向が続くと、債券市場ウオッチャーや経済全体にとって、潜在的に憂慮すべき兆候となるだろう。 ほとんどの予測では、米国は夏の終わりから秋の初めにかけて、すべての義務を期限内に履行するための資金が底をつくとみられているが、一部の予測では、税収の低迷により、早ければ5月か6月には債務不履行に陥る可能性があると警告している。

財務省の最新データによると、27日に同省の現金残高は2810億ドル(約42兆円)に減少。それ以外では、金融債務を履行し続けるための特別措置として残された調整余地があるが、26日時点で2070億ドルほどしかない。

イーロン・マスク氏率いる「政府効率化省(DOGE)」による内国歳入庁(IRS)職員の削減や、消費者と企業の景況感を悪化させている関税政策など、政治的な混乱が予測を下回る税収の一因になっている可能性があると専門家は指摘している。

米財務省の現金収支

米議会予算局(CBO)は26日、「債務上限が変更されない場合、特別措置を活用した政府の借り入れ能力は2025年8月または9月に尽きる可能性が高い」と声明で指摘。「政府の借り入れニーズがCBOの予測を大幅に上回る場合、財務省の資金は5月下旬か6月中にも底をつく可能性がある」とした。

確定申告の統計によると、IRSが受け取った申告書の数は、2024年の同時期と比較して1.1%減少。追加で納税する義務のある申告者は、できるだけ遅くまで納税を先延ばしにする傾向があるため、4月15日の締め切り直前の数週間に税金の支払いが急増する傾向がある。一方、還付金の総額は昨年よりも4.6%多くなっている。

共和党の駆け引き

財務省の資金が枯渇するいわゆる「Xデー」が予想よりも早く訪れた場合、議会には債務上限に関する計画がまだない。

スーン共和党上院院内総務は現在、トランプ大統領の減税案とともに、少なくとも4兆ドルの債務上限引き上げを含む共和党主導の予算決議案の推進に取り組んでいる。しかし、議会共和党は時間がかかり政治的に複雑な交渉の初期段階にあり、2カ月でまとまる可能性は低い。

5月に支払い不履行になるリスクが高まるようであれば、共和党は減税法案を一時的に保留し、債務上限の問題だけに集中するよう圧力がかかるだろう。減税とセットにならないのであれば、債務上限の引き上げを支持する共和党議員が十分に集まる可能性は低く、民主党に頼らざるを得なくなる。そうなれば、債券市場を不安にさせるような、政治的に危険な「チキンゲーム」が再び始まることになる。

ベッセント財務長官は、税収の大半が入り始める5月初旬に債務上限に関する最新情報を提供すると述べている。

最大の未知数は、DOGEによるIRSの人員削減が、税金の徴収能力と納税者の納税意欲に悪影響を及ぼすかどうかだ。エール大学予算研究所の最近のリポートによると、IRSの人員削減は「違反の劇的な増加」を招く可能性がある。

同研究所の政策分析ディレクター、リチャード・プリシンザーノ氏は「税金の申告に関して態度が変わるかもしれない。税金を回避しようとして、控除をより積極的に利用するようになるだろう」と指摘。「納税額の増加が見られなければ、納税者の態度が変化した可能性が高い。納税者は『IRSが監査を行う立場が弱くなるだろう』と見越している」と続けた。

原題:Slow US Tax Collections Spark Angst About Debt Ceiling X-Date(抜粋)

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