消費者不在の政策で一層のコメ離れ

一連の動きを振り返ってみると、農水省の見通しの甘さに加え、消費者不在の行政であることがよくわかります。農家所得の維持こそが最大の命題で、そのために「生産抑制」するという発想です。

減反政策は表面上やめたことになっていても、年間数千億円も転作奨励補助金を出しており、「生産抑制」は脈々と続いています。今回の騒動でコメ価格が上がり始めた当初、農水省は農家所得確保の観点から、好ましいとさえ思っていたのではないでしょうか。

インフレでパンや麺類も値上がりする中、唯一自給できるコメは、本当なら消費拡大のチャンスでした。その好機を逃したばかりか、コメ離れを自ら促した展開には呆れてしまいます。今回の「失政」と言っていい責任を、政治家も官僚も、誰もまだ取っていません。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)