職種の明暗は「テクノロジー」と「グリーン」が決める

「Future of Jobs Report 2025」は、世界の雇用市場が2030年に向けて大きな構造転換期を迎えることを示している。

国際労働機関(ILO)のデータと企業調査の結果を組み合わせた分析によれば、テクノロジーの進歩、グリーントランジション(環境対応型経済への移行)、経済の不確実性、地政学的分断などのマクロトレンドにより、現在の正式雇用(フォーマル雇用)全体の22%に相当する規模で雇用の新陳代謝が起こると予測されている。

具体的には、1億7000万(現在の雇用の14%相当)の新規雇用が創出される一方で、9200万(同8%相当)の既存雇用が失われる見通しである。この結果、差し引きで約7800万(同7%相当)の純増となることが見込まれている。

このような大規模な雇用の入れ替わりは、グリーン産業やデジタル産業といった成長セクターへの労働移動の必要性や、自動化による定型的業務の縮小などを示唆している。企業や労働者には、この構造的な変化に対応するための準備、特に新たなスキル獲得や人材育成が求められることになる。

注目すべきは、業種や職種による明確な二極化である。

成長率が最も高い職種としては、ビッグデータ専門家(約120%の成長率)を筆頭に、フィンテック技術者、AI・機械学習スペシャリスト、ロボット工学エンジニア、ソフトウェア開発者などのデジタルテクノロジー関連職種が上位を占めている。

また、自動運転・電気自動車スペシャリストや再生可能エネルギーエンジニアなど、グリーントランジションに関連する職種も大きな成長が見込まれている。これらの職種の台頭は、企業のデジタルトランスフォーメーションの加速や持続可能性への取り組み強化を反映している。

一方で、郵便窓口係、銀行窓口係、データ入力係、レジ係、管理・秘書職、会計・経理事務員といった定型的な事務作業やルーチンワークを担う職種では、自動化・デジタル化の進展により大幅な雇用減少が予測されている。

このような職種の二極化は、テクノロジーの進歩とグリーン化の潮流が、従来型の業務プロセスを根本から変革していることを示唆している。この変革の中で、2030年に向けて求められるコアスキルも大きく変化することが予測されている。