英国では資産家への課税強化を背景に富裕層がロンドンを離れる動きがあるが、多くは将来的な政策転換を見据えてロンドンの住宅を手放さずに保有している。サザビーズ・インターナショナル・リアルティの英不動産部門を率いるジョージ・アザール氏が語った。

同氏はインタビューで、労働党政権が200年続いたノンドム(英国非永住者)向け税優遇措置を廃止した判断について「愚かだった」と述べた。ただ、この政策変更は裕福な外国人によるロンドン不動産の売却にはつながっていないという。

ドバイを拠点に同社の別部門も運営する元銀行家のアザール氏は、「現時点ではドバイよりロンドンに賭けている」と述べた。右派ポピュリスト政党「リフォームUK」を率いるナイジェル・ファラージ氏など富裕層外国人の呼び戻しを公約とする政治家の人気上昇を理由として挙げた。

アザール氏は「もし労働党が明日、リフォームUKが約束しているのと同じことをすると言えば、大きな支持を得るだろう」と話した。

「適切な人々を呼び戻さなければならない。多くのヘッジファンドがロンドンから移転し、英国はたくさんの人材と頭脳を失っている」とも語った。サザビーズはロンドンでも最高額クラスの住宅物件の取引を仲介している。

2024年序盤以降、英国で実施された一連の税制改革により、エジプトの大富豪ナセフ・サウィリス氏など数多くの富裕層が国外に流出した。

この結果、ロンドンの高級住宅市場は低迷。調査会社ロンレスによると、500万ポンド(約10億1000万円)以上のロンドン住宅の取引件数は過去1年で35%減少し、値引き幅も拡大した。

ロンドンの住宅を売却しようとしても需要低迷で買い手確保が困難なことが背景にある。ただ、不動産会社ボーチャンプ・エステーツによれば、多くのノンドムはロンドンの物件の中でもマンションは保有し続けているという。

アザール氏は、富裕層を呼び戻すような政策変更が次期総選挙前後に導入されれば、ロンドンの高級住宅価格は「3年以内に回復する」との見方を示した。富裕層の多くは言語面や教育環境の魅力からロンドンに戻りたがっているとも付け加えた。

ロンドンのケンジントン・アンド・チェルシー地区にある住宅物件

原題:Mega-Rich Plotting Return to London, Sotheby’s Housing Boss Says(抜粋)

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