年収の壁対策

最後に、年収の壁対策としても煮え切らない。住民税の非課税ラインの引き上げ幅が抑制されるためだ。パート主婦(主夫)の場合には、配偶者特別控除が段階的に縮減する仕組みになっていることから、税制において「手取り逆転が生じる」という意味での本質的な「壁」はそもそも制度上存在しない。それでも税の壁で就業調整を行う人が多い理由ははっきりしているわけではないが、シンプルに「税を払いたくない」といった考えもあるのだとみられる。今回、税の控除額の引き上げがパート主婦(主夫)の労働供給拡大に寄与するとすれば、そうした人たちの労働供給を拡大する経路だと考えられる。住民税の負担が生じるラインの引き上げが給与所得控除の+10万円に抑制されるのであれば、年収の壁対策としても中途半端になる。

なお、学生の年収の壁については特定扶養控除の基準額150万円への引き上げのほか、配偶者控除・配偶者特別控除に類似した形での「手取り逆転」が生じない仕組みが導入される方針だ。社保の壁(親の健保の扶養を抜けて国保に加入する必要が生じる)は依然として残るものの、そこに到達するまでの年収130万円ラインまでは学生の労働供給拡大に一定の効果を持つことが期待される。

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 星野 卓也)