バイデン米大統領が次男のハンター・バイデン氏に対する恩赦を公然と正当化し、ハンター氏が政治的な標的にされたとして司法省を非難したことは、長年にわたり政界で慎重に築き上げてきた、重要な米機関の尊厳を守ることに最大の忠誠を誓う誠実なブローカーとしての自身のイメージを損なう恐れがある。

バイデン氏は、ハンター氏に対する恩赦に署名したと発表し、家族を救うために大統領権限を行使することはないとしていた従来の姿勢を180度転換させた。

これを受け、共和党はバイデン氏が選挙前に国民をだまし、政治的な利害が消えた後に方針を転換したと非難した。

一方、ホワイトハウスは方針転換を正当化する理由をほとんど示しておらず、バイデン氏がハンター氏と過ごす機会があった感謝祭の休暇中に今回の判断を巡って「葛藤」し、その後、方針を変更したとの説明のみにとどまっている。

バイデン氏による恩赦の正当化は、大統領選からの撤退やドナルド・トランプ氏の勝利によってすでにひどく傷ついていたレガシーをさらに傷つけるだけでなく、今回の決断が次期政権に利用され、刑事司法制度の独立性を守る長年の規範が骨抜きにされるのではないかとの懸念をあおっている。

バイデン氏の決断には、自身の指揮下でも検察当局が政治的に利用されていたという示唆が暗に含まれている。これはトランプ次期政権の当局者が司法省や連邦捜査局(FBI)、諜報(ちょうほう)機関の改革を正当化するために利用してきた点だ。

ベネット上院議員(民主)は「バイデン大統領の決断は職務よりも個人的な利益を優先させるものであり、司法制度が誰にとっても公平かつ平等という米国民の信頼をさらに損なう」と非難した。

もっとも、バイデン氏がハンター氏に最終的に恩赦を与えたという決断は、バイデン氏とその家族が経験してきた悲劇、そしてどんな犠牲を払ってでも家族の絆を守ることに重点を置くバイデン氏の姿勢を考慮すると、それほど衝撃的なことではない。

バイデン氏の最初の妻と娘は、バイデン氏が上院議員に初当選してからわずか数週間後に交通事故で亡くなった。また、バイデン氏の副大統領在任中には長男のボー・バイデン氏が脳腫瘍で死去した。ボー氏の死は家族に多大な影響を与え、ハンター氏はその喪失感を薬物およびアルコール依存に陥った理由として挙げている。

恩赦を正当化するに当たり、バイデン氏は政治的な要因が司法プロセスに影響を与え、誤審につながったと確信していると述べている。

原題:Biden’s Pardon of Son Threatens to Tarnish Legacy, Empower Trump(抜粋)

--取材協力:Skylar Woodhouse.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2024 Bloomberg L.P.