選挙から中央銀行の金利動向、戦争に至るまで、市場に激変をもたらす可能性のある出来事が相次ぐ中、予想が当たればあらかじめ決められた額が支払われるオプションの人気が高まっている。

個人投資家からシステマティックなヘッジファンドまで、多くのトレーダーが「ゼロ・デー・オプション(ゼロDTE=ゼロ・デー・トゥー・エクスピレーション)」を利用している一方で、大口投資家は複数の資産にわたるテールリスクをヘッジできる店頭バイナリーオプションにますます注目している。

バイナリーオプションは、100%かゼロのどちらかしかない、オール・オア・ナッシングの取引。オプション取引というよりもスポーツイベントでの賭けに近いという批判もあるが、厳格なリスク制限の範囲内で目標リターンを達成することに重点を置く投資家にとっては極めて有用だ。

ソシエテ・ジェネラルのフロー戦略・ソリューション責任者、エルベ・グイヨン氏は「今年は、イベントリスクを巡る資産横断的なデュアルバイナリーオプション取引が活発化している」と述べた。

バイナリーオプションはすべて店頭取引で、複数の相手方との取引であるため、市場規模を判断するのは難しいが、2024年にこのような仕組みに費やされるプレミアムの推定額は、数億ドルから数十億ドルに上る。

今年はイベントリスクの多い年だった。米国、欧州、インドでの選挙から、「ライブな」米連邦公開市場委員会(FOMC)会合、数十年ぶりに動きを見せた日本銀行、中国での大規模な景気刺激策見通し、エスカレートするウクライナ戦争、そしてイランとイスラエル間でくすぶる緊張関係が爆発する恐れなどだ。

中でも最大の注目イベントは米大統領選挙だった。ドナルド・トランプ氏の政策が株価を押し上げるという期待から、同氏の当選後に米国株は上昇した。一方、欧州や中国では、トランプ氏の当選が関税の脅威とより対立的な通商政策をもたらし、企業利益が圧迫される恐れがある。

ブルームバーグ・インテリジェンスのチーフデリバティブストラテジスト、タンビール・サンドゥ氏は「欧州は関税リスクに直面しており、欧州株下落とユーロ下落の組み合わせなどのハイブリッドオプションは通常、レバレッジを高め、コストを削減する」と述べた。

主要なイベントこそが、クロスアセット取引の妙味を高める。いわゆるバイナリーオプションでは、購入者が支払いを受けるには複数の条件を満たす必要がある。例えば、株式で「X」が起こり、同時に通貨で「Y」が起こるという具合だ。権利行使価格を超えて市場が変動した場合により高い利益が得られるバニラオプションとは異なり、リターンはあらかじめ定められている。

UBSグループのストラテジストは先週、大統領選挙後の取引として、S&P500種株価指数が現在の水準の96.15%を下回る、およびスポット金価格が最近の値下がりの一部を回復する、という期間3カ月のバイナリーオプションを推奨した。 両方の条件は最近満たされており、株価が下落した場合のテールリスクから資産を保護する「コンベックス」ヘッジとして機能するとストラテジストは考えている。

バークレイズのストラテジストは米国の投票前、「トランプ氏の勝利=貿易関税=欧州資産の危機」というシナリオを強調した。トランプ氏の勝利が欧州株とユーロの両方に打撃を与えることを見込み、ユーロ・ストックス50指数が当時の水準の97.5%未満となり、ユーロ・ドル相場が同98%未満となる12月期限のバイナリーオプションを提案した。

BNPパリバの戦術的ソリューションセールス責任者、ウリエル・クトノフスキー氏によると、主に株式+金利または株式+為替のバイナリーオプションを取引する顧客は1回の取引につき平均75万ドルを費やし、予想が当たれば1000万ドルを稼ぐことも可能だという。

原題:Hedge Fund All-or-Nothing Trades Gain Traction in Options Market(抜粋)

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