(ブルームバーグ):日本で車を買おうとする人は一般的に納車までに長い待ち時間を求められることが多くなっているが、日産自動車に関してはそのような心配はないようだ。
他メーカーが新車の出荷に半年以上を要することもあるのに対し、日産は人気車種でも1-2カ月以内に納車できる。店頭にある車を購入してそのまま乗って帰る習慣がある米国でも不人気ぶりは似ている。人気のハイブリッド車(HV)がないこともあり、市場調査会社コックス・オートモーティブの調べによると、10月の日産の在庫は平均109日分で業界平均の85日、トヨタ自動車の35日を大きく上回っている。

日産の1月から10月までの生産台数は、日本では前年同期比で7.4%減、米国と中国ではそれぞれ11%、12%の減少となった。背景には発売から時間がたった商品ラインアップと在庫の滞留があり、販売奨励金への支出増大で利益が圧迫される状況が続けば日産の業績立て直しが難しくなるおそれもある。
日産ブランドは劣化していると、豪マッコーリー・グループのアナリスト、ジェームス・ホン氏は話す。同社が抱える問題はHVを持たないことに限らず、「状況の変化に対する対応が非常に遅かった」とみているという。
新車販売に関するデータやディーラーへの取材では、トヨタのほとんどの乗用車は納車までに約6カ月を要し、スポーツカー「スープラ」は1年以上かかる。都内のあるホンダ販売店によると、品切れや注文の殺到で小型車「フィット」など多くの主要モデルの納車を一時的に停止しているという。一方、日産では販売台数上位の小型車「ノート」やミニバン「セレナ」でも比較的短期間での引き渡しが可能だ。

今年、日本の自動車メーカーは主要市場の多くで大幅な落ち込みを見せたが中でも日産は特に大きな打撃を受けた。北米でトヨタやホンダと競合できるHVを持たず、それでいながら中国の比亜迪(BYD)や米テスラに匹敵する電気自動車も展開していないためだ。
自動車販売のコンサルタントを手掛けるヘイグ・パートナーズは最新のリポートで、日産の製品は他社に比べて競争力がなく、ディーラーは日々古くなっていく在庫をはかせるためにインセンティブが必要になると指摘している。
もっとも、今後しばらく新車やモデルチェンジが予定されており、反転攻勢への期待もかかる。
手頃な価格帯でありながら余裕のある室内空間を備えた小型スポーツ多目的車(SUV)「キックス」の新型を投入。さらに改良版のSUV「ムラーノ」、「アルマーダ」も年末までに発売する予定だ。また、来年にはローグのプラグインハイブリッド版を、2026年には日産独自のHV技術である「e-Power(イーパワー)」の米国投入も予定している。
日産の米国事業担当のブライアン・ブロックマン氏はインタビューで「今後数年間は成長の可能性があると考えている」とし、「健全で持続可能な方法で成長したい」と話した。
--取材協力:ドーソン・チェスター.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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