地価動向

地価は住宅地、商業地ともに上昇している。国土交通省の「地価LOOKレポート(2024年第1四半期)」によると、全国80地区のうち上昇が「80」(前回79)となり、調査開始以降、初めて全ての地区が上昇となった[図表3]。

同レポートでは、「住宅地では利便性や住環境に優れた地区におけるマンション需要が堅調であること。商業地では店舗需要の回復傾向が継続しオフィス需要も底堅く推移し上昇傾向が継続した」としている。

不動産サブセクターの動向

1)オフィス
三鬼商事によると、2024年6月の東京都心5区の空室率は5.15%( 前月比▲0.33%)、平均募集賃料(月坪)は5カ月連続で上昇し19,979円となった。ただし、他の主要都市をみると、空室率は新規供給の影響で横浜(8.58%)と仙台(6.34%)が高い水準にある。また、2024年は大阪と福岡で大型の供給が控えており今後の動向を注視したい[図表4]。

一方、募集賃料は全ての都市で前年比プラスを維持している。
東京の成約賃料データに基づく「オフィスレント・インデックス(第2四半期)」によると、26,791円(前期比+5.6%)と3期連続で上昇し、空室率は5.7%(前期比+0.1%)に上昇した[図表5]。

東京オフィス市場では賃料の底打ちが明確になっているものの、来年にオフィスの大量供給を控えるなか需要拡大の持続性が試されることになる。

2)賃貸マンション
東京23区のマンション賃料は、全ての住居タイプが前年比でプラスとなった。2024年第1四半期は前年比でシングルタイプが+4.7%、コンパクトタイプが+4.4%、ファミリータイプが+0.6%となった[図表6]

総務省によると、4-6月の東京23区の転入超過数は約5.5万人となり2019年同期対比で3%増加した。都市部への人口流入に伴う需要の高まりを背景に賃料が上昇している。

3)商業施設・ホテル・物流施設
商業セクターは、インバウンド消費の好調な伸びを受けて施設売上が増加している。商業動態統計などによると、2024年4-6月の小売販売額(既存店、前年同期比)は百貨店が+12.1%、スーパーが+1.7%、コンビニエンスストアが+0.9%となった。ホテル市場は、日本人の宿泊需要に頭打ち感がみられるもののインバウンド需要が牽引し宿泊者数はコロナ禍前の水準を上回って推移している。宿泊旅行統計調査によると、4-6月累計の延べ宿泊者数は2019年対比で+6%増加し、このうち日本人が▲2%、外国人が+35%となった[図表7]。

また、CBREの調査によると、首都圏の大型物流施設の空室率(2024年6月末)は9.7%となった[図表8]。

約3年続いた空室率の上昇傾向は今期で頭打ちとなる見通しであるが、空室面積が64.2万坪と過去最高水準にあるため空室率低下のペースは緩やかとなる見込みである。