米政府は、コロラド州ボルダーにある気候学研究の中核拠点、米大気研究センター(NCAR)を解体する方針だ。トランプ政権は、同センターが数十年前に気候変動研究に軸足を移し、本来の使命から逸脱したと主張している。

ボート行政管理予算局(OMB)局長は16日夜のXへの投稿で、米国立科学財団(NSF)の支援・資金提供を受けるNCARが解体されると明らかにした。

この発表は科学界とコロラド州当局に衝撃を与え、州側は計画に反対を表明している。

Photographer: Allison Robbert/Bloomberg

あるホワイトハウス高官は17日、NCARを左派的な気候活動の拠点と評した。この高官によると、NSFは見直し後、気候研究活動の縮小に向けてNCARを分割し、天気予測モデルやスーパーコンピューティングなどの機能を別の拠点か組織に移す方針だという。

今回の動きについて、米紙USAトゥデーが先に報じていた。

トランプ大統領は気候変動を「でっち上げ」や「詐欺」と呼び、気候変動対策を「新たなグリーン詐欺」だとして批判してきた。しかし、科学者のほぼ全員が、化石燃料の燃焼を中心とする人間活動が地球温暖化をもたらしているとの見解で一致している。

昨年は観測史上最も暑い年となった。年間気温ランキングの上位10位は全てこの10年間に集中している。

NCARには800人超の職員が在籍し、2025会計年度にはNSFから運営資金1億2300万ドル(約191億円)の提供を受けた。1960年の設立以来、著名建築家I.M.ペイが設計したメサ研究所には世代を超えて多くの科学者が集まっている。

テキサスA&M大学のアンドリュー・デスラー教授(大気科学)は、この解体計画を「科学への破壊行為だ」と批判した。

ブラウン大学の気候科学者キム・コブ氏はNCARについて、「米国の気候科学の礎」であり、自身を含む世界中の科学者の研究に「多大な」影響を与えてきたと指摘。異常気象や機械学習、人工知能(AI)など幅広い分野で最先端研究を担う同施設を閉鎖することは「率直に言って国家安全保障上のリスクだ」と警告した。

NSFは声明で、NCARの「研究・観測能力の構造を見直している」とした上で、季節予報や暴風雨、宇宙天気などのニーズに集中するため、モデリングや予測研究・運用の「範囲を変更することを検討する」と説明した。

原題:US Plans to Dismantle Major Climate Research Center (1)(抜粋)

--取材協力:Skylar Woodhouse、Leslie Kaufman、Brian K. Sullivan.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2025 Bloomberg L.P.