(ブルームバーグ):今後4年間の経済の方向性を決定付けるであろう米大統領選挙が目前に迫った。
トレーダーたちは、共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のカマラ・ハリス氏のどちらが優勢か、また、それが自分たちのポジションにどのような影響を与えるかを予測するために、最新の世論調査や選挙賭け市場の動きを常にチェックしながら、さまざまな可能性について話し合ってきた。
ウォール街がトランプ氏に賭けるという臆測もあったが、それを基に実際に株式市場に資金を投じているというわけではない。
投資のプロは、勝者が決まる前にそれを言い当てることで大きな利益を得られることを知っている。 問題は、今回の選挙はそれにはあまりにも接戦であり、多くの人にとって予想を外すリスクが高過ぎることだ。
「選挙の結果はコインの裏表のようなものなので、結果を予想しようとはしていない」と、ウェルス・アライアンスの社長兼マネジングディレクターのエリック・ディトン氏はインタビューで述べた。「賭けをするのは意味がない」という。
ほとんどのトレーダーは、ボラティリティーの高まりを予想している。CBOEボラティリティー指数(VIX)は20を超え、株式市場のストレスが高まっていることを示している。投資家が米大統領選結果に賭けることにあまり熱心でないのはこのためだ。

「世論調査は過去に何度も間違っていた」と、ジョーンズトレーディングの株式セールストレーダー兼マクロストラテジスト、デーブ・ルッツ氏は言う。「誰が勝つかなど、わかるはずがないのだ」
現金での安全策
もう一つの難題は、市場を動かす可能性が高い選挙以外の要素だ。 投票日の翌々日の7日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見があり、半導体大手エヌビディアの決算は20日に予定されている。
そういうわけでルッツ氏は選挙絡みのポジションは組まず、代わりに個別銘柄やセクターが勝者の出現に過剰反応するなど、短期的なチャンスが訪れた際に活用できる「現金の保有」を推奨する。
「多くの投資家がまさにこのようなポジショニングを取っているだろう」とルッツ氏は語った。
ブランク・シャイン・ウェルス・マネジメントのロバート・シャインCIOは、選挙を前に現金同等物の保有率を通常の5%から10%に引き上げたという。 選挙結果が市場の少なくとも一部に変動を引き起こすことが避けられない場合に、有利な資産に素早く飛びつくのが目的だ。
ノーザン・トラスト・アセット・マネジメントのグローバル資産配分部門CIO、アンウィティ・バフグナ氏は「状況が投機的過ぎるため、トレーダーは現時点ではポジションを構築することさえできない。また、いずれの候補についても、どの政策提案が実際に議会で可決されるかも分からない」とインタビューで語った。
当然かもしれないが、市場は神経質になっている。S&P500種株価指数は史上最高値付近で取引されているが、VIXは20を超えている。
ヘッジファンドはさらに大きな価格変動に賭けている。米商品先物取引委員会(CFTC)が今月初めにまとめたデータによると、大口投機家は2019年1月以来初めてVIX先物のネットロングに転じた。

オプション市場のデータによると、トレーダーはディフェンシブな姿勢を維持しており、急激な売りに対するヘッジを通常よりも高い額で設定していると、アシム500の創業者、ロッキー・フィッシュマン氏は述べている。
「市場が選挙結果が判明する6日の高ボラティリティーを織り込んでいるのは明らかだが、その前後も決して静かな状況ではない」とフィッシュマン氏は述べた。
原題:Wall Street’s Eyes Are On the Election, Its Money Not So Much(抜粋)
--取材協力:Natalia Kniazhevich、Alexandra Semenova.
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