半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の創業者である張忠謀(モリス・チャン)氏は、米国が中国への最先端半導体の供給を制限する中、TSMCは成長を促進する過程で「最も厳しい」課題に近く直面すると述べた。

26日に台湾の新竹市で開催された社内イベントで「TSMCは今やあらゆる主要国が確保したいと望む分野だ」とし、2019年に初めて提起した考えを改めて強調。「半導体、特に最先端の半導体の自由貿易は死んだ。このような環境下で当社の課題は成長をいかに推進し続けるかにある」とした。

新竹市で開催されたTSMCの年次スポーツデーに参加した張忠謀(モリス・チャン)氏(10月26日)

アップルやエヌビディアを主要顧客に持つTSMCは世界の人工知能(AI)アクセラレーターの99%を製造している。旺盛なAI需要を背景に今年は過去最高の売上高を記録する見通しで、株価はオープンAIが対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」を公開した22年以降で約3倍となった。

それでも米国が日本やオランダなどの同盟国と協力して中国による最先端の半導体や製造装置へのアクセスを制限しているため、TSMCは中国顧客向けに最も強力なAI向け半導体を製造することを制限されている。中国は依然としてTSMCの売上高の10%以上を占めている。

TSMCは今月、特定の顧客向けに製造した半導体が最終的に中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)に渡っていたことを発見したと、ブルームバーグが報じた。TSMCはファーウェイ製品に搭載されていることに気づき、10月中旬頃にその顧客への出荷を停止した。その後、米政府と台湾当局の双方に通知したという。

TSMC幹部は26日にファーウェイに関する問題には触れなかった。

張氏はTSMCには成功を確実にする強力なチームがあるとし、従業員のおかげで24年も記録を塗り替える年になる可能性があると語った。

一方、魏哲家最高経営責任者(CEO)は、TSMCが技術的リーダーシップを高めていくことを完全に確信していると言及。米アリゾナ州の新たな半導体工場は「順調に進んでいる」と改めて強調し、TSMCは現在、世界的な半導体業界でさらに重要な役割を果たしていると述べた。

原題:TSMC Faces Severe Challenges as Free Trade Falters, Founder Says(抜粋)

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