野村ホールディングス(HD)傘下の野村証券による国債の相場操縦を受け、生命保険会社や資産運用会社、信託銀行など複数の国内大手機関投資家が、同証との間で債券や株式など有価証券の取引を原則、停止したことが分かった。

事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に語った。取引を停止しているのは少なくとも10社。野村証が再発防止策を講じれば、取引を再開する可能性があるという。ただ、機関投資家側に必要な同証との一部取引は行われる場合がある。

また、地方公務員の年金基金など約36兆4000億円を運用する地方公務員共済組合連合会(地共連)の担当者は、野村証との間で、自家運用部分での地方債購入と日本国債の売買を停止したことを明らかにした。匿名を条件に語った同担当者によれば、内規に基づき9月26日から同取引を停止しているという。

野村HDの看板

野村HDの広報担当者は、個別の取引については顧客の判断になるとして、「答える立場にはない」と電子メールでコメントした。

野村HDの株価は18日午前の取引で、前日終値を挟んで推移していたが、大手機関投資家による取引停止の報道が伝わった午後に入ると一時同1.5%安まで売られる場面もあった。

証券取引等監視委員会は9月下旬、野村証のトレーダーが国債先物取引で相場操縦(金融商品取引法違反)行為をしたとして、課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告した。野村証は法令違反事実を認める答弁書を同庁に提出している。

金融資本市場では証券業界トップである野村証の不祥事を受け、同証との取引を控える動きが広がっている。複数の企業や地方公共団体が社債の引き受け主幹事から同証を除外したほか、財務省は国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)資格を一時停止した。

野村HDの2024年3月期の通期純利益は前の期比79%増の1659億円と20年4月の奥田健太郎社長就任以来、通期ベースで初めて増益を確保した。野村証では財務省による資格停止措置の発表を受け、連結業績に与える影響については必要が生じた場合、速やかに開示するとした。

18年には三菱UFJモルガン・スタンレー証券が国債先物の相場操縦で金融庁から課徴金納付命令を受けた。三菱モルガンは同8月に再発防止策や役員報酬の自主返上を公表している。

GCIアセット・マネジメントの池田隆政シニア・ポートフォリオ・マネジャーは、生保や運用会社は「受益者にとって信頼される選択をすることが必要だ」と指摘。「大手機関投資家でガバナンスの目が厳しくなっているのは理解できる」と述べた。

調査会社クレジットサイツは最近のリポートで、今回の問題による野村HDへの影響について、株式の相場操縦で会社や元執行役員が有罪判決を受け、一部取引停止で収益の落ち込みが底を打つまでに1年以上を要したSMBC日興証券に比べ、「それほど厳しくない」との見方を示した。

(年金基金の具体例を追加して更新します)

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