選好されてきた円トレードが、外国為替市場の急変動で巻き戻しを余儀なくされる中で、ヘッジファンドの円ポジションが2021年以降で初めて強気に転じた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が16日発表した13日終了週の建玉(未決済約定)報告によれば、投機筋のポジションは、円の売り越しから買い越しに転換した。7月初めの段階で極端にネガティブだったセンチメントが急速に改善された。

CFTCの報告によると、レバレッジドファンドの円のネットロングは86枚(約700万ドル相当)に増加。円の売り越しが約2万枚だった6日終了週から一変した。7月初め以降、これらのトレーダーの弱気センチメントが後退する様子がCFTCのデータに反映されている。

 

日本銀行が利上げを継続するとの観測に絡み円相場が反発した後、ポジショニングが変化した。その後、日銀当局者が沈静化を促す発言を行ったが、相場の急変動に見舞われた投資家は、低金利通貨の円で借り入れ、国外の高利回り資産に投じるキャリートレードを解消せざるを得なくなった。

円の対ドル相場の上昇率は7月初め以降で約9%と、他のG10通貨をアウトパフォームしている。

マニュライフ・インベストメント・マネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、ネイサン・トホーフト氏は「円のキャリーポジション解消の傾向は全体として続いているようだ」とした上で、「しかし、ボラティリティーの元の水準への回帰が有意に見られることから、円ショートポジションがいくらか増加するのではないかと思う」と指摘した。

円は16日、ドルに対し1%余り上昇して一時1ドル=147円63銭をつけた。それでも今週は円安傾向が続いており、一部の運用マネジャーは円を中心にしたキャリートレードを再開している。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストはCFTC報告の発表前に、円売りポジションがこれまでのように積み上がることは想定しづらく、巻き戻しが円を支えやすいと分析。ただパニック的なポジション調整が終わり、改めて円キャリーに取り組む動きも想定されると述べていた。

トレーダーは来週23日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を待ちつつ、米利下げのタイミングとペースを見極めるため米マクロ経済データを精査している。日銀の植田和男総裁は23日の閉会中審査に出席する予定。

原題:Hedge Funds Turn Bullish on Yen After Carry Trade Blow-Up (1)、Hedge Funds Turn Bullish on Yen After Carry Trade Blow-Up(抜粋)

(市場関係者のコメントなどを追加して更新します)

--取材協力:酒井大輔城塚愛也.

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